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人体を学ぶためにはもう少しの時間を必要とする。また、もう一つ言えることは、学生がもっと明確な目的を持ったころにこの実習をおこなうべきではなかろうか。今の我々には歯科医師になるというばくぜんとした目的しかない。こんな目的しかもたない我々には、実習で得たものの価値が半減してしまうような気がする。しかし、これは定められたこと。どうしようもないのかもしれない。そこで僕はこれから実習をおこなおうとしている学生に言いたい。解剖学実習は驚きと感動はたくさんあるかもしれないが、まだきちんとした目的もなく、知識も足りない二年生には決しておもしろいものではないかもしれない。また、時間が足りないので忙しく、学べることも少しかもしれない。しかし、その中で少しでも得たものがあるのならいいのではないか。また御遺体を臭いとか、きもちわるいとかで御遺体に抵抗を感じるかもしれない。が、それは皆感じることでしかたがない。しかし、それにまさる学ぶ意欲さえあれば、その何倍もの代償を得られるだろう。実習は受ける学生によって、無限の可能性を秘めているといえる。全てを理解しようとするのは無理である。自分なりの目的を少しでももち、そのところを学んで得られるものがあれば、それで実習をした意義というものがあるといえるのではないだろうか。

僕は実習を通してやれることは、やった気がするが満足はしていない。でも、今は実習の大変さが身にしみているのでもう一度やりたいとは思わない。ただし、これから歯科医師になっていく上で、何らかの目的を得たならば、その時はもう一度この実習にいどむかもしれない。

 

 

 

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