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私は、実習を行うことに対して、不真面目に考えたことなど一度もありませんでしたし、全力を出し切ることが御遺体に対する最大の敬意だと考えていました。しかし、何か心構えが足りなかったのでしょうか、自分の解剖実習に対する認識、考え方が甘かったように、御遺体を前にして感じました。それから私は、改めて解剖実習の意味というものを考え直しました。これは私自身の見解ですが、目の前に横たわっている御遺体の方々は、亡くなられる直前には何らかの医療的処置を受けた方々だと思います。結果、医学の限界・人間の限界というものに直面し、亡くなられた方々だと思います。そのような方々が、これから医学を糧として医師を志す私たちのために、そして医学の発展のために献体してくださった方々には何と感謝をしたらよいかわからないほど、言葉では言い表せません。しかし、私はそう考えた時に思いました。この方々を現代の医学では救えなかったかもしれないけれども、私が医師になった時、この方々の御子孫の万が一の際に、少しでも発達した医学を身につけた私たちが支えとなることができたらと考えるようになって、心も落ち着き、気を引き締めることができました。

そのような初心を持ち続けて解剖実習に臨んでいるつもりでした。特にふざけていたわけでもないのですが解剖が始まって二ヶ月ほど過ぎた頃でしょうか、ちょうど肋骨を切り落とし、肺を摘出する際、私は右手を切ってしまいました。肺と肋骨の間に手を入れる時に肋骨を切った部分が、とがっていたために切れてしまいました。

 

 

 

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