それは人の気持ちの大きさであり、そして人というのは、言葉を発しなくても何かを語りかけるということです。私は、その語りかけに応えなければならないという使命感も覚えました。知識という面だけでなく、内面の精神的な充実というのは、言葉には表せないものだと解りました。人に対する思いやり、感謝、そして痛みをわかり得る人間になる大きなきっかけとなったこの実習や、献体に踏み切って下さった方への感謝というものを一生忘れないでいたい。
解剖学実習を終えての感想
加賀元宗
解剖学実習が九月九日に終わりました。クラス皆が長期にわたる実習を終えて、一人一人がそれぞれ深い感慨を抱いてから、一ヵ月がたちました。
ふり返ってみると、去年私は岩手医大に入学しました。私の両親は医師ではありません。私は自分の長期入院や、母の病気、私の周りの大切な人の死といった出来事により、医師になりたいと思いました。だから、私の医師への思いには特別なものがあります。そして、その医学の礎といわれ、医学、医師への第一歩といわれる解剖学実習に対して、私は入学前から、不安やある種の憧れを抱いていました。