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WAVE国際港湾セミナー

 

北西欧州の港湾と港湾管理運営の現状の動向

 

1999年12月17日

 

講師:Dr. A.M.J. クローケル

オランダ・ユトレヒト大学

地理学系応用地理計画学部都市地方計画講座教授

 

1. はじめに

 

ここでは、西欧の港湾が今日直面する挑戦と危急課題の一般的概要を論じようと考えています。その後、港湾と港湾管理運営に必要な適応を探ります。これについては特に、他の港湾や欧州後背地における他の輸送・物流関連機関との関係という広い背景の中で考察します。このパートでは同様に、欧州連合の各機関が港湾の開発・整備にどうかかわっているかを指摘していきます。最後に結論として、規制緩和・市場開放の状況下で、海上輸送と港湾に関する問題をよりよく理解するための有望な枠組として、プライベートセクター・アプローチと国際レジーム(体制)理論をご紹介します。

 

2. 海外・後背地との接続網の現状

 

まず始めに、一般的な傾向として、今日では60年代以降のコンテナ輸送によって促進された海運における競争の激化と市場体制が決定的であり、世界中の港湾に重要な影響を与えているといえます。

 

以下の特徴があげられます。

(1) コンテナ輸送は海上輸送のさまざまな形態に競争を持ち込み、より効率的なマルチモダル・ポート(複合輸送港)形成に有利に作用。

(2) コンテナ輸送は、複合輸送オペレーター(船、鉄道、トラック)に門戸を開いた。

(3) コンテナ輸送と複合輸送は、少数の巨大な海運・複合輸送会社、輸送コンソーシアム(資本合弁企業)の出現をもたらした。

(4) コンテナ輸送は、基本的に非海運同盟船舶会社と海運同盟船舶会杜のサービス品質差をなくした。

(5) コンテナ輸送と海運同盟船舶会社の弱体化は、アジアの海運会社、特に台湾(エバーグリーン)、韓国、香港、中華人民共和国の会社の増加をもたらした(Zacher, Sutton, 1996)。

 

主要海運会社を網羅する連合の形成は、競争の激しい環境で永続的な地位を保証するためのステップと考えることができます。一方、港湾は、他の港や他の物流・輸送接点との間でその地位やシェアを(特に、主要海運会社の少数連合という環境下の競争で)強化ないしは少なくとも維持していく必要に迫られています。

 

北西欧州で共通する後背地を持ち競合関係にある港は、いわゆるハンブルク―ルアーブル圏にある港、ルアーブル、ダンケルク、ゼーブルッヘ、ゲント、アントワープ、ロッテルダム、アムステルダム、ブレーメン、ハンブルクです。これらの港の基本的特徴として、3つの事象があげられます。

 

1. この圏内の各港のシェアは、長期にわたって非常に安定している。ハンブルク―ルアーブル圏の港は、競争の激化にもかかわらず、堅調と思えるパターンを示している。

2. 特に国際的接続網の面から重要な港、いわゆる主要港湾であるロッテルダム、アントワープ、ハンブルクと、ハンブルク―ルアーブル圏の他の港との違いが長期の間に確立されてきた。

 

 

 

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