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率直に言って従来の公社制度のもとで新規バースを整備し、収支をバランスし、且つ国際競争力を保つというのは極めて困難になってきており、今後殆どの新規ターミナルは恐らく新方式に頼っていかざるを得ないと思います。

従って非常に有難いこの新方式ですが、他方で幾つかの問題も生じております。例えば新方式によるターミナルは、公共ターミナルとほぼ同等に施設整備に税金が投入されます。しかし、一方で実質的には特定のユーザーの専用利用に供される可能性が高くなります。すなわち、従来は公社と公共方式ターミナルそれぞれのシステムが明確に違っておりましたが、この新方式の登場によりまして、その境界が不明確になってきております。また、施設整備に税金の投入がない既存の公社ターミナルユーザーと新方式のユーザーとの間で、不公平が生じてきます。また、公共ターミナルは建前上は、不特定多数のユーザーが随時利用するということですが、現実には単一もしくは少数の特定の利用者の専用的利用になっているケースが多いのが実態でございます。

その様なことで、整備方式の面でもあるいは利用の面でも、公共と公社の境界が不鮮明になってきています。かかる状況下で、一つの港のなかに、コンテナターミナルに関して、二つの、港によっては三つの管理・運営主体がいるという現在の二〜三元管理の是非が問われ始めています。要するに現状の二〜三元管理を改めて、一元管理にすべきではないかという問題意識が顕在化しつつあるわけです。

この一元化にも色々な案があると思います。まず第一の案は港湾管理者がすべてを一元的に管理・運営する。その場合当然、公社は必要なくなるわけです。二つ目の案は、ターミナルの整備は公共サイドで行い、ターミナルの管理運営はより柔軟な経営が可能な公社が一元的に行うという案。第三の案は、民間のセクターに運営させるというもの。現状では、これらの案のうちいずれの案が有力なのかを言える段階にはないと思いますが、早晩、相当抜本的な管理運営体制の変革が迫られるのではないかと言う思いを強くしております。

もう一点、ブロウニング博士のお話のアジールポート・コンセプト、興味深く拝聴しました。コンテナ船の大型化が急ピッチで進んでおりますが、私ども横浜港でも約1年後、2001年春に、バース水深16m、22列型ガントリークレーンを擁した超大型コンテナターミナルが稼働する予定です。この諸元からすると、10,000〜13,000TEUに達するような超大型船が利用可能なターミナルであるわけです。近い将来このような超大型の船が出現し、船型に応じた大量のコンテナを一定の時間内に処理するとなると、単にバース水深やクレーンだけではなく、輸送ネットワークのあちこちで新たな対応を迫られることになるのではないかと思います。特にコンテナターミナルでは、そういう大量の貨物を短時間に処理し得る様々な工夫が必要になってくると思います。シンガポールとか、ロッテルダムなどでは、既にかなり研究が進んでいるようですが、本日のアジールポート・コンセプトは初めて拝聴しました。そういう観点から興味深く聞かせていただきました。

以上、簡単ですが、感想を述べさせていただきました。有難うございました。(拍手)

 

 

 

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