4.5 詳細衝突シミュレーション結果
(1) 衝突船が大型肥大船(Suezmax及びVLCC級タンカー)である場合
図5-1及び5-3に示す様に衝突船が空荷状態にある場合には、Suezmax級衝突船とVLCC級衝突船の船首バルバスバウの圧潰が共に顕著に生じる。一方、照射済核燃料等運搬船の船側構造破壊の程度は余り目立たない。2船の強度差が大きい為、ミノルスキー法が前提としている「2船の構造に同等量の圧潰が生じる」様な結果とはなっていない。発生する接触力は衝突の初期段階で約9500トン重の最大値に達する。衝突船の前進速度減少と照射済核燃料等運搬船のSway運動速度増加は、大まかには時間に比例して生じる。2船の速度が同一となる値は、運動量保存則から推定される値にほぼ一致している。全体のエネルギーバランスで整理すると、衝突船の構造損傷・被衝突船の構造損傷・摩擦・造波減衰の各エネルギーが占める割合は、それぞれ55%・23%・13%・9%(Suezmax級衝突船の場合)及び、61%・25%・13%・1%(VLCC級衝突船の場合)であった。
衝突船が満載積付状態にある場合には、図5-2及び5-4に示す様に、Suezmax級衝突船とVLCC級衝突船の船首バルバスバウの圧潰は共に殆ど生じない。これは衝突位置関係上、衝突船の船首ステム傾斜部(上下)がそれぞれ被衝突船の上甲板と船底に対して斜めに貫入する為である。この様な破壊モードは、圧潰モードを主に仮定するミノルスキー法の適用外のものになっている。照射済核燃料等運搬船の縦通隔壁及び船倉内の内底板に破断は生じ無いが、内底板・横置隔壁・クロスデッキには座屈による圧潰がかなり生じ、二重船側全体が船倉中心線方向へ相当めり込む結果となっている。発生する接触力の最大値は約13000トン重に達する。衝突船の前進速度減少と被衝突船(照射済核燃料等運搬船)のSway運動速度増加は、大まかには時間に比例して生じる。2船の速度が同一となる値は、運動量保存則から推定される値にほぼ一致する。エネルギーバランスで整理すると、衝突船の構造損傷・被衝突船の構造損傷・摩擦・造波減衰の各エネルギーが占める割合は、それぞれ10%・51%・34%・5%(Suezmax級衝突船の場合)及び、7%・61%・30%・2%(VLCC級衝突船の場合)であった。衝突船がバラスト状態にある場合とは逆に、被衝突船の構造損傷で吸収されるエネルギー量が5〜9倍大きくなっている。また、ステム傾斜部の、運搬船の上甲板と船底への貫入が斜めに生じる為にすべり量が大きいので、相対的に摩擦エネルギーが増加している。