8.結言
本検討部会では、平成8年度から平成11年度まで、内航船の満載喫水線基準を合理的に評価することを目的として、以下のことを行ってきた。
1]日本周辺の波浪の特性についての調査
2]現行の内航船の調査
3]水槽実験による船体応答計算法の妥当性の検討
4]海水打ち込み荷重の推定法の開発
5]海水打ち込み荷重の長期予測法の開発
これらをもとに、近海区域を航行する貨物船のうち、比較的本邦に近い水域(概ね距岸100海里以内)において本邦各港間のみを航行するもの(限定近海船)に対する満載喫水線基準策定のための検討を行う上で、船舶の安全性に係る様々な要素を考慮しつつ、日本近海の海象条件を基に現行の基準の相対的な評価を行った。これにより限定近海船の満載喫水線基準を策定する際の基礎資料を得ることができたと考える。
なお、国際基準については、1966年の国際満載喫水線条約に関する1988年の議定書が平成12年2月3日に発効したことに伴い、今後、国際的な枠組みの中で頻繁に技術基準の検討が行われていくものと思われるため、引き続き条約上の技術基準の見直しについての検討を行う必要があるが、本検討については、RR71基準検討委員会に引き継ぐものとする。
本研究の成果が、今後の内航船の満載喫水線の基準を、船型、航行実態に即した合理的な基準策定のための指針となり、ひいては内航海運の運航の効率化に役立てられれば幸いである。