3.2 現II-2章との比較
3.2.1 現II-2章からの新II-2章への再編成方法
SOLAS第II-2章の総合見直し作業の基本方針として、新II-2章案では、規則の内容及びグレードは変更せず、規則を分かり易いように書き換え、並び替えることが合意されている。一方、IMOのMSCへはSOLAS条約の改正提案が出されて来たが、それらの中で審議することがMSCにて合意された改正案については、FPが検討して新II-2章案に適切に盛り込むこととなっている。
さらに、現第II-2章の中で規則の内容が不明瞭な個所や主管庁に判断を委ねている部分について、FP第42回会議(1997年12月)は統一解釈の指針案を完成した。MSC第69回会議(1998年5月)はこれをMSC/Circ.847「Interpretation of Vague Expressions and Other Vague Wording in SOLAS Chapter II-2」として回章し、各国がこれを用いるよう要望した。この解釈は、第II-2章の内容を説明あるいは補足するものであって、新しい要件や内容を持つものではない。これらの解釈の内、第II-2章を明確にし、かつ一般的に適用可能なものについては、新II-2章に取り込むこととなった。
以上の作業方針に従って、現II-2章の規則の文章を、2.3で示した新II-2章の規則案あるいはFSSコード案の中に移植する作業を行った。
従って、MSCにて規則改正の検討が認められている部分以外では、現第II-2章と新II-2章案との間に規則及びその要件の内容の差はない。但し、以下の3.2.2に示す改正合意事項については、規則の内容に差異が生じている。
3.2.2 現II-2章と新II-2章案との主な差異点
3.2.1で触れたように、MSCにて規則改正の検討が認められている点については、以下に述べるような現第II-2章と新II-2章案との間の差が生じている。
(1) 車両区画、特殊分類区画等の定義
FPの第43回会議(1999年1月)は、高速船コードの改正案を検討しそのFPとしての最終案に合意した。その議論の過程で、高速船コードとSOLASにおいて、ロールオン・ロールオフ区域、特殊分類区域、車両区域の定義を合致させるべきであるという意見が示され、FP43はこれに合意し、HSCコード改正案に盛り込まれたこれらの定義を新II-2章においても使用することが概ね合意された。しかしながら、従来の第II-2章の定義を高速船コード改正案の定義に換えると、第II-2章の規則内容の変更が余儀なくされる場合もあると考えられた。そのため、FP43以後のII-2/CG内で我が国は、これらの定義の変更がもたらす問題点を指摘した。FP44では、SOLAS II-2章の定義はIMDG Codeとの整合が重要で、HSC Codeはそれ自身で完結しており考慮しない事が合意された。この合意に基づき、我が国がDraftを再度作成した。これらは現SOLASと基本的に一致しており、かつIMDG Codeとも整合性が図られたことから合意された。
(2) 火災荷重
船舶居住区域の可燃物の規制について現II-2章では、34規則及び49規則に壁や天井面の内装表面材の容積規制(面積×厚さ)と発熱量規制(45MJ/m2以下)がある。但し、これらの規制には、家具、寝具類及び敷物類が含まれていない。船室内の可燃物の量は、壁や天井の表面材よりも家具や寝具類の方が多いため、現II-2章の可燃物の制限では不充分であるという主張が認められ、可燃物の総量規制(火災荷重の制限)を新II-2章に盛り込む方向で検討されてきた。