このように設定される群島航路帯においては、設定された中心線の両側それぞれ25カイリ幅の航路帯から構成され(国連海洋法条約第53条(5))、すべての船舶及び航空機は国際海峡における通過通航権に準じた群島航路帯通航権を有することになる(同条約第53条(2)及び第54条)。インドネシアの群島航路帯をめぐる動きを見るかぎり、同航路帯の利用国の主張が大幅に取り入れられているように思われる。
なお、このIMOの一連の動きに対して、群島水域を有するフィリピンは、「インドネシア群島航路帯の指定をめぐる議論と同意は、インドネシアに限って適用されるものであり、群島航路帯指定に対する将来の適用の先例を作るものと解釈すべきではない」ことを強調している(MSC 69/WP.11 para.5.30)。
(図12)設定予定のインドネシア群島航路帯
5. 接続水域その他の水域
(1) 朝鮮半島からマラッカ海峡に至るわが国周辺諸国の海域に対する動向として、領海及び群島水域以外に、接続水域その他の水域についても触れておきたい。
これらの諸国のうち、韓国、中国、ベトナム、カンボジア、タイ、ビルマ(ミャンマー)の各国はいずれも接続水域を設定しており、その幅員は国連海洋法条約に定める24カイリに統一されている。一部の3国(シンガポール、マレーシア及び北朝鮮)が設定していない。朝鮮半島からマラッカ海峡までの大陸諸国は、マレーシアを除いて接続水域を設定済みといえよう(47)。
これら沿岸国の大半が接続水域の設定目的として自国法令等にかかげている項目は、国連海洋法条約第33条が定める「通関、財政、出入国管理及び衛生」の四項目にとどまらず、「安全(security)」を含めていることに注目しなければならない。逆に、設定目的を上記四項目にとどめている国は、韓国一カ国だけである。接続水域の設定目的として「安全(security)」を掲げることにより、沿岸国はどのような管轄権を行使しようとしているのか、文言上からは明らかではないが、ベトナムの1980年3月17日のデクレは、外国軍艦の接続水域内への入域につき、自国への事前通告と許可を受ける必要がある旨の規定を置いているといわれる。このベトナムの主張に対しては、米国が抗議している(48)。