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タンカーの大型化、積載貨物の高度の危険性の増大という現状があり、沿岸国がこれに脅威を感じるようになった現在、沿岸国が第12部によって与えられた権限では不十分であるような問題に直面する機会も増大するであろう。そのような場合に、航行利益への不当な介入を阻止するためにも、合理的かつ必要な介入が最大限どこまで可能でありまたその限度がどこにあるかを解釈的に特定しておくことが必要である。そのためには第12部の規定を海洋汚染に関する自己完結的な特別の制度と考えるのではなく、領海制度一般とくに領海通航制度との関係で洗い直してみる必要があるのではないだろうか。本稿が特に指摘したかったのはこの点である。

 

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(1) いわゆる「(油汚染)介入権条約」(International Convention relating to Intervention on the High Seas in Cases of Oil Pollution Casualties[1969, Brussel])、「油以外の物質による汚染に関する介入権議定書」(Protocol relating to Intervention on the High Seas in Cases of Marine Pollution by Substances Other than Oil [1973, London])、海洋法条約(LOS Convention)221条、参照。

(2) アチカン・ユニティ号事件は、爆発炎上中のギリシャ船アチカン・ユニティ号(アントワープ港からケープタウン港向け化学物質を運搬して航行中)を、オランダのサルベージ会社がオランダ領海への入域を拒否する政府の命令に反して、オランダ海岸に座礁させた(水先案内人はベルギー人)が、同船は海岸に座礁後爆発炎上し、オランダはその処理のために多額の費用を支出した。この費用の償還を求めて国がサルベージ会社を訴えた事件である。この事件ではそもそも入域を拒否する権限が国にあったかが問題となり、地方裁判所は「緊急事態」を理由にその権限を否定したが、控訴審では通航が無害性を欠く場合として入域の拒否が正当とされた。最高裁判所は、無害通航については入域を拒否する権限はないが、本件は海岸に船舶を座礁させる目的で入域しようとしたものでありそもそも「通航」にあたらないことを理由に、領海に対する主権に基づいてオランダが外国船舶の入域を拒否できる場合にあたると判断した。

 

 

 

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