日本財団 図書館


これらの教訓により、合衆国コーストガードでは、相手船を停船させる必要がある場合、先ず、ホイッスル、サイレン、メガホン、その他あらゆる信号を使用し、これに失敗すれば14U.S.C.637に基づき実力行使ができる。警告射撃はすくなくとも3回空砲で行い、空砲が使えないときは実弾を用いるが、相手船舶の前方に到着するように射ち、他船や人又は陸上の物体に害を与えぬよう十分注意する。相手船舶が停船しないときのみ、船舶を狙い、その中に発砲することができるが、船舶を沈めたり船舶内の人を殺傷する故意があってはならない。発砲は、真の必要ある事情の下に、その行為を正当化しうるときのみ用いられる最後の手段であり、その相手船舶が、重要な国家的利益又は国家的安全に影響を与える重大な違反と疑われる場合でなければ行えないとしているのである。

それゆえであろうか、第88丸中丸のケースでは、合衆国コーストガードは、威嚇射撃は行ったが、船体に対しては一切射弾を浴びせてはいない。また、我が国のケースであるラズエズノイ号事件では、武器使用の適法性について、裁判で明らかにはされなかったが、正当防衛の主張と、完全に領海内であったことが大きく影響したものと推測された。このような諸事例からみて、条約上の権利として或いは国内法の執行として、勿論執行する海上警察機関の側において適法になされている法の執行適用行為に際して、比例原則を守りつつ、相当性、必要性、補充性を満たすことを前提に実力行使をすることができるもの解される(27)。そうすると、国際慣習としての枠を前提にして、各国は、国内法で、領海内か接続水域内か等の水域についてや、相手違反船の態様等に応じて、どのような実力行使を行い、どのように武器を使用するのかを定めるということであり、その部分については、各国に任されているということになる。ここに、国内法の規定の是非が問題になってくると思われる(28)

海上にあっては、警備船が相手船を停船させて、臨検、検査をなすべく停船命令を発した場合、当該停船命令に従わず逃走したことを理由に、威嚇射撃をすることまでは、比較的容易に認められているように理解される。翻って、我が国の場合、相手船の違反行為の内容が判然とせず、しかも漁船でもない船舶であればなお、該船を停船せしめて、立入検査を行うために武器を使用できるかと問うてみたときに、回答は逡巡せざろう得ない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION