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(イ)備砲により空砲を打つ。(ロ)空砲が使用できない場合は、実弾を使用することができるが、船又は陸上の人命財産に危害を与えないように、停船させる船の前方に着弾させる。(ハ)備砲が使用できない場合はライフルを使用するが、その使用が相手にわかるような距離に接近する」と規定し、「ハ 上記の威嚇射撃を無視して停船しない場合に限り、該船に向かって射撃することができるが、この場合でも目的は船を損傷することであり、決して船を沈めたり、人を傷つけてはならない。更に次の条件を守ることとされている。(イ)その手段をとることが周囲の状況から真に必要であり、正当化できる直接的な理由があること。(ロ)最後の手段であること。…(ホ)その違反が重要な国益又は国の安全を脅かすものであること」と定めている。海上警備研究会、前掲書、107-108頁。このように米国沿岸警備隊の危害射撃は、現在では、あくまで航行能力低減実射(disabling fire or disabling shots)の性格を有するものに過ぎないのである。

56 もっとも厳密に言えば、かかる条約水域と領海を同一視できるかどうかは議論のあるところであり、1924年条約で創設された当該水域の法的性格をどう捉えるかで執行措置のあり方は変わってくることになる。この点については、村上、前掲論文(注53)、63-65頁参照。

57 本事件の顛末については、中村洸「国際紛争における非司法的解決手続の意義-国際審査と調停について-」『ジュリスト』No. 782、119-120頁、村上、前掲論文(注53)、66-72頁、林久茂「レッド・クルーセイダー号事件」(田畑・太寿堂編『ケースブック国際法〔新版〕』(有信堂、1978年)所収)、316-319頁参照。

58 1959年4月27日の交換公文は、フェローズ諸島の経済が漁業に大きく依存していることを理由に、青色の線(6海里)と赤色の線(12海里)を設け、フェローズ諸島沿岸から青色の線までの海域で英国の漁船が排除されることに英国は異議を申し立てない代わりに、デンマークは英国の伝統的漁業権を承認し、青色の線から赤色の線までの海域での英国漁船の操業に異議を申し立てないことを定めていた。この点については、cf. C. John Colombos, The International Law of the Sea, 6th ed., (Longman, 1967), pp. 155-156.

 

 

 

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