4. 1994年7月15日海上取締法と1995年4月19日海上における強制と武力の使用に関するデクレ
(1) 1994年7月15日海上取締法
(ア) 1994年法の制定経緯は、以下のとおりである。1984年および1989年のスペイン漁船に対する海軍の発砲について、法的な根拠が存在しないことがフランス国内で議論にのぼった。結果的には、発砲者の刑事責任にまで議論が及んだのである。1989年の発砲については、首相による指令(instruction)が与えられていたが、これは行政的な意味はあっても、発砲の法的な根拠を整えるためには充分ではなかった。また、この指令は、目的・対象を漁業取締に限定していたために、より一般的に強制措置及び実力の発動の法的根拠を整備する必要が認識された。このような国内的な事情に加えて、国連海洋法条約上の沿岸国の取締の権限と責任(警察・環境・関税などに関しての取締)が増大したために、これを国内的に実施するためにも立法措置が必要であると判断されたのである。*31
取締法の適用範囲については、フランス船舶に対してはあらゆる場所において適用があり、外国船舶に対しては、フランスの管轄下にあるか、あるいは、公海上であっても国際法に予定されている場合に(通商、海賊、テロリスムなど)適用がある(2条)。
取締措置の内容としては、審査(reconnaissance)、臨検(visite)、航路変更(曳航も含む、領海外退去もある)、追跡がある(3,4,5条)。これらの措置は、国際法(条約及び慣習法)に規定されている措置と変わらないが、国内法上で、しかも、平時について、これらの措置を規定する法が成立したことが重要である。
取締に服従しないときには、最大100万フランの罰金により担保されている(8条)。