3) 物質収支モデルの検証
上記の物質収支モデルの妥当性について、塩分(塩素量)を用いた検証を行った。
塩素は潟湖内で生成・消失することがなく、また、河川から供給されることもないため、潟湖内における一定時間内の変化量は潮流に伴って海域から出入りする量(移流量)に等しくなる。このため、今回用いた収支モデルの精度が高ければ、(11)式右辺における計算結果は0となり、生成・消失量(P)は0と算出されると考えられる。そこで、栄養塩等で行った計算と同様の方法によって塩素量の収支を求め、モデルの妥当性について検討を行った。なお、湖内の地点については栄養塩等と同じ時間、層(表層)の塩分をもとにしたが、水道部については、栄養塩等と同じ時間(7:30、13:30)の他、期間Iでは6:00、7:30、9:00、期間IIでは12:00、13:30、15:00における表層と海底上0.1mのの平均値をもとに算出した。
塩素量収支の計算結果を表-6.10に示す。各期間の計算結果をみると、下げ潮時の期間Iでは海域への流出(A)が潟湖内の塩素量の減少(ΔCV)よりも大きく、生成・消失量(P)は正の値を示した。一方、上げ潮時の期間IIについてみると、潟湖内の増加量は海域からの流入量よりも大きく、生成・消失量は正の値となった。
各期間で算出された生成・消失量の潟湖内の変化量に対する割合を求めると、期間Iでは-8.6%、期間IIでは4.4%と求められた。したがって、塩素量を指標に潟湖内の変化量と移流量の収支を検証した結果からみると、今回用いた収支モデルは期間Iでは約9%、期間IIでは約4%程度の誤差を含んだものであると考えられた。
なお、水道部の塩素量に栄養塩等と同じ時間、層のものを用いた場合でも、値に大きな差は認められなかった(期間I:-8.8%、期間II:2.8%)。
注)塩素量はUNESCO(1962)より以下の式に基づいて算出した(海洋観測指針)。
塩素量(mg/L)=(塩分)/1.80655・1000