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3.2.3 今後有効と考えられる燃料消費量削減技術

 

これまで見てきたように、機関単体では熱効率で20%程度の向上が見られ、船体や推進機の改良で15%程度の消費エネルギー原単位の向上が見られた。また、同DWTクラスの一日あたりの燃料消費量を、80年代初頭(1980-1984)と90年初頭(1990-1995)で比較すると、VLCCタンカー(20万〜30万DWT)では、17%程度の向上が、同じく大型コンテナでは13%程度の上昇が見られた。

この後に3.4.1において示すように、輸送量の増加を見込んで燃料消費量の将来動向を予測すると、現在技術レベルで新造船が建造された場合、2010年代には1990年比3.3%程度の増加が想定されることから、船舶からのCO2発生量を1990年レベル程度に低減維持するためには、一層の技術開発等が必要である。そこで、今後輸送効率向上に対して有効と考えられる技術等について造船メーカーなどへの聞き取り調査により定性的な評価を行った。

輸送効率向上に対して技術的に有効と考えられる技術について個々に評価した結果をtable 34にとりまとめた。ここでの短期的長期的技術の区分は、COPの目標設定年である2010年に実船に対して技術的に適用可能であるかを基準とした。国際的な競争下にある外航船舶においてコスト評価は非常に困難であるが、ここでは技術開発コストを含めたイニシャルコストが大きいかどうかを定性的に評価することに加えて、それによって得られるランニングコスト(≒燃料消費量)の削減が十分に期待できるかどうかを定性的に判断することとした。

その結果、設置の容易さ、既存の船にも導入可能なこと、およびイニシャルコストが比較的低いこと等から、PBCF等の船体付加物が短期的な削減技術として適していると考えられた。また、仮に迅速なC02削減対策が求められた場合には、既存船舶に特段の新しい装備等を必要としない減速航行が最も有効であると判断された。ただし、減速航行は社会経済的に求められている高速輸送に反する面を有すること、措置の実効性を担保するためには世界での協調が必要であること等に留意する必要がある。

現状では、個々の技術については実験水槽やテストベッドでの性能評価がほとんどであり、必ずしも実海域での性能が十分予測できるとは言えない面がある。また、単体技術での効率向上は僅かであっても、幾つかの技術を複合することで実海域において相乗的な効率向上(あるいは相殺効果による性能低下)がもたらされる場合もあると考えられる。したがって、今後の技術評価においては、波浪を含めた実際の航行時をできるだけ想定して評価することが肝要であり、そのためには、既存船において採用されている技術について、試験データと比較対照すべき実運航データの収集・解析(モニタリング)手法の開発等が必要である。

 

 

 

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