6.2.6 地球的規模で展開する海洋プラットフォームのネットワークシステム
(1) 構想の概要
地球環境問題が深刻化する中で、地球の70%を占める海の重要性は高まっており、海洋のグローバルな観測が国内外で計画、実施されてきている。このような計画の例としてとは、世界中の海に3,000個のセンサーを浮き沈みさせながら海洋の観測を行う「ARGO計画」や、北部太平洋を含む海域に海面ブイシステムを展開する海洋科学技術センターの「TRITON計画」などがある。しかしながら、センサによる観測では、広域な海洋を網羅することは困難であり、かつ、非常に多くのセンサが必要とされる。また、リアルタイムでの観測は困難である。一方、ブイシステムでは、ブイが空間的に離散的に設置されるため、ブイ間の観測が困難である。
これらに対して、標記システムでは、100m四方の浮体式プラットフォームを、1,000km間隔で海洋に設置し、プラットフォーム間に300km間隔でブイを設置して海洋観測を行う。さらに、点の分布であるブイ間はAUVでつなぐとともに、衛星通信技術等を利用することでリアルタイムでの観測が可能であると考えられる。
(2) 海洋新技術の意義
広域なリアルタイム海洋観測を可能な限り少ないブイや施設を用いて実現することが可能であり、観測が海洋環境に与える影響を少なくすることが出来る。また、このシステムでは海洋観測と共にシーレーンの監視や、プラットフォームを船舶の無人航行のチェックポイント、中継港湾などの多目的に利用することが可能であると考えられる。
(3) 必要な要素技術
本構想に必要な技術要素としては、海洋観測の中継基地となる「浮体式プラットフォーム」、プラットフォーム間の海洋観測を行う「観測ブイ」、最後に、ブイ間をつなぎ、多くの観測装置(センサー)を装備した「AUV」が考えられる。
(4) 要素技術の現状
1] 浮体式プラットフォーム
海洋石油掘削の分野において、石油掘削リグとしてセミサブ(半潜水)型の浮体式プラットフォームに掘削装置を搭載したものが実際に使用されており、これらを活用することが可能と考えられる。現在、海底からの石油やガスの生産に使用されている浮遊式生産システムで最も深い水深に設置されたものは、1994年に設置された施設で、水深が910mである。このような、浮体式のリグは係留が課題であるが、この施設は8本のチェーン/ワイヤー複合ラインで係留されている。