6.2 新規海洋開発・利用技術確立に関する課題の創出
6.2.1 一大海洋基地の創出
(1) 構想の概要
沖合(特に熱帯性)の海域に海上構造物を建設し、さらに、マイティホエールなどを利用して波力発電および静穏域を創出し、周辺の海を総合的に利用する。その際、創出された静穏域に深層水を汲み上げ、その冷水性および富栄養性を利用すれば、温度差をバリアーとした、生け簀を用いない先進的な養殖も可能である。本構想の概念を図6.2.1-1に示す。
(2) 海洋新技術の意義
海は、食糧資源の供給場所として重要な役割を果たしてきた。現在でも我が国において魚介類は国民への動物性タンパク質供給量の4割を占めており、我が国において最大の動物タンパク質供給源となっている。しかし、200海里漁業水域の設定などにより漁場は制限され、現在、漁業は「とる漁業」から「つくり育てる漁業」へ移行してきている。このような状況の中、「つくり育てる漁業」の中心である養殖では、環境保全、疾病対策などが問題点として挙げられている。これに対して、沖合での深層水を利用したバリアフリーの養殖では、疾病の心配もなく大量の養殖が可能であると考えられる。さらに、マリノフォーラムで開発している人工浮海底システムを併用すれば、藻類や、アワビなどの養殖も可能である。また、海上構造物の建設場所を、沖の鳥島上に選べば、我が国の広大な200海里を確保することも可能である。
(3) 必要な技術要素
一大海洋基地を創出し上記のような養殖を行うためには、これまでに行われたプロジェクトなどの多くの成果の統合が必要である。特に以下の技術が中核技術として必要である。
・海上構造物の建設技術、ライフサイクルエンジニアリング
(維持管理技術を含む)
・深層水の汲み上げ技術
・海を利用した電力創成
・静穏域の創出技術
(4) 要素技術の現状
1] 海上構造物の建設技術およびライフサイクルエンジニアリング
(維持管理技術を含む)
我が国では、数キロメートル規模で、100年耐用の超大型浮体式海洋構造物を実現するための総合システム技術を確立することを目標に「超大型浮体式海洋構造物」プロジェクトが、平成7年度より進められている。