このようなバイオマイクロマシンの研究には機構の解明の他に、2つの方向性がある。1つは分子を利用して、鞭毛のような分子モータを実際に試作する方向と、このようなメカニズムを別な材料(例えばシリコンなど)で模倣して試作する方向である。前者では、1990年に既に2種類のタンパク質をつないで動きを伝える「タンパク質歯車」が試作されている。また、後者は、「バイオミメティクス」とも呼ばれることもあるが、有機材料などを用いて人工筋肉などの開発が行われている。研究例としては、電歪ポリマーを電極膜で挟んだ構造の人工筋肉アクチュエータが開発されており、大きさは5mm×5mm×20μmで、1mmの変位量と10mNの力が取り出されている。
(3) 今後の展望
「マイクロマシンシステム技術の技術開発」の1つの目標である「発電設備用高機能メンテナンス技術」は、船舶や、建造してから内部のメンテナンスが困難と考えられる潜水艦などのメンテナンスシステムヘの応用が考えられる。また、3.2.6項に述べる「バイオテレメトリ」においては、対象生物につける送信機(プローブ)による生態への影響が問題である。それらの問題の解決手法としては、微小な送信機の実現が考えられるが、その際に、マイクロセンサおよびマイクロシステムテクノロジーが有望な技術と捉えられる。
[参考文献]
・μMフロンティア研究会編著「マイクロマシン革命」日刊工業新聞社(1999).
・(財)先端加工機械技振興協会編「LIGA プロセス」日刊工業新聞社(1998).
・那野比古「マイクロマシン」講談社現代新書(1993).
・宝谷紘一、江刺正喜「マイクロマシン」読売科学選書46(1991).