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6.2 まとめ・今後の課題

 

本研究開発の第一段階では、自動化が不可能とされていた上向き姿勢溶接部に対して溶接開先内に特殊溶接トーチを挿入し、重力により溶落する溶融金属を溶接トーチと共に移動する摺動銅板で受止め自動溶接を行う溶接方法を開発した。また溶接進行とともに変化する溶接開先、溶接姿勢、溶接線のズレに対して溶接装置自らが検出演算し、自動位置修正、自動溶接条件設定等の適応制御(溶接知能)を考案、試作し性能確認を行うと共に渠底の凸凹面をレールレスで走行し且つ自らが走行ズレを検出演算し、搭載した溶接装置を溶接装置の指令速度で溶接線に自動追従させる移動車と追従適応制御(走行知能)についても考案、試作を行いモックアップ船体の試験材(水平上向姿勢)で両者の性能を確認した結果、設計通りの性能を得、従来より上向き溶接の課題であった高能率自動溶接が実現した。

第二段階では溶接条件が短時間に大幅に変化し、自動制御上最も困難な水平姿勢から曲り部を通過して立向き姿勢に至る連続溶接について開発装置の改良と現場の船底外板を想定した実用化への運転実験を行なった。結果、本研究開発では傾斜部に入る時点で溶接中に溶接方法の自動変換(エレクトロガスアーク溶接への変換)を行なう手法の発明と開先加工度の低いI開先によるギャップ溶接等の技術確立を得る事が出来た。これらは今後の溶接技術へ広く応用出来ると考える。

これにより本溶接法では17万トンバルクキャリア船(中型船)の板厚12〜19mm迄I開先のギャップ13mmにおいて溶接確立ができた。VLCC(大型船)等の板厚19mm以上についてはY開先とし、仕上げ溶接(半自動溶接)を併用することで溶接は可能である。尚、第一段階で試作したプロトタイプ機は溶接機を追従させるアームの寸法不足が発生したため45°傾斜部分迄しか実証連続溶接が出来なかったものの実用機では満足されるものである。これら本開発装置へさらなる改良を加えて実船適用実験を行ないブラッシュアップする事を今後の課題とする。

開発装置の他分野への応用としては、両面溶接を行っている厚板部材に対して母材下側を走行することにより、部材の危険な反転なしに両面溶接ができる可能性が大きい。

溶接機単独では船側のエレクトロガス溶接にも転用可能である。また、自走知能移動車は自立走行が可能で多機能なアームを有した装置である。この機能を利用し、アーム先端についている溶接機の代わりに塗装スプレーガンや超音波探傷器、研掃装置を取り付けることにより以下の装置の開発も可能である。

a. 船底外板用研掃・塗装ロボット

b. 船底外板用超音波探傷検査ロボット

c. 定期点検船の船底付着貝殻・海草除去ロボット

 

出願特許(4件出願中)

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