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はじめに

本報告書は、平成10年度〜11年度の2ヶ年にわたり実施した、「搭載行程における船底外板の自動溶接システムの開発」の成果をとりまとめたものであります。

今日、船舶建造現場に於ける設計・加工・組立工程は、造船組立工作技術や自動制御技術等の進歩により自動化が進み、品質、能率等は大幅に改善されてきてはいるものの、建造ドックでのブロック搭載工程は、その多くが未だ手作業により行われています。中でも船体の溶接作業のうち、船底や前後部の曲がり外板部については、溶接姿勢が上向き、横向き、縦向きに複合的に組み合わさっていることから、これまで溶接の自動化は困難とされてきました。

このような状況から、本事業ではこれまで熟練溶接士が船体の内外より足場を介して行っていた現状の手溶接に代わり、船体の外側のみから溶接部の複合変化に対応できる溶接方法と溶接装置全体が溶接部に自動追従できる適応制御を確立し、従来にはない地上組立てブロックにも広く適用できる「より安全、高品質、高能率な溶接を行う搭載工程における船底外板の自動溶接システム」を開発することにより、造船業CIM促進に必要なFA(Factory Automation : 工場の自動化)の難所を攻略するとともに、造船技術、関連技術の向上及び我が国造船業の発展に寄与することを目的に研究開発が行われました。

研究開発は、昨年度に自動溶接装置と適応制御装置についてプロトタイプ機の設計・製作と各装置の性能確認を行い、本年度は性能確認実験で生じた装置の不具合箇所、改良必要部について設計・製作等、システム全体のブラッシュアップを行いました。さらに、試作したプロトタイプ機に溶接現場を想定した運転実験、各種改良、溶接品質改良を加え研究開発装置が完成いたしました。

今後は、本開発装置へさらなる改良を加えて実船適用実験を行い、現場における溶接能力の向上を図ることとしております。また、開発装置は塗装スプレーガンや超音波探傷器等他分野への応用も可能であります。

本装置を幅広く有効利用していただくことはもとより、現場における溶接作業のさらなる向上に寄与することができれば幸いです。

本事業は、開発委員会(石川委員長)の各委員のご熱心なご審議・ご検討により完遂したものであり、これらの方々に対し心から感謝の意を表する次第であります。

平成12年3月

財団法人シップ・アンド・オーシャン財団

会長 今市憲作

 

 

 

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