3.4.2 欧米における開発動向
欧州では、前節で触れたFMSに関わるものに加え、様々な海運造船分野におけるIT関連開発プログラムが実施されているが、それらの殆どはEspritと呼ばれる欧州内での総合的な共同ITプログラムの一環としてなされている。すなわち、Espritとは、ITを活用して欧州域内の産業競争力を強化するのがその目的であり、欧州委員会(European Commission)の産業委員長(DGIII; Directorate General for Industry)の指揮下にあって、各企業・組織からの研究開発提案を審査して予算を交付する開発研究活性化の為の施策である。Espritは1984年から1998年にわたって、約4年ごとに計四つの研究プログラム(Esprit1〜Esprit4)を実施してきており、現在Esprit5(1998〜2002)のフェーズに入っている。ただし、現時点でまだこのフェーズの研究提案書を募集中であるから、実際の開発研究はフェーズの期間と2年ほどずれて実施されているようである。
Espritが採択の対象とする開発項目は、基本的には将来を見据えた長期的な研究課題が主であるが、具体的な研究対象としては、情報化/電子取引時代に即した業務プロセスのありかた(Technologies for Business Processes aims to support the change and transformation of enterprises to take best advantage of information technologies, business process re-engineering and human resources. The two main themes are business best practice pilots and enterprise systems integration, and the domain also includes the rapidly emerging field of electronic commerce.)や、同じく情報化時代に即したいわゆるCIMの研究(Integration in Manufacturing aims through the development of new IT solutions, to accelerate and enhance the ability of European manufacturing industry to capitalize on the emergence of a powerful global information infrastructure.)といったもの、すなわち我々が目指しているものとほぼ同じであるが、加えてそれらを支えるソフト・ハード両面のコンピュータネットワーキング技術そのものも、その研究対象としている。
Esprit傘下の開発研究は多岐にわたるが、海運造船分野についてはWONDER MAR("wide-open" working group in the maritime sector)というワーキンググループが別途組織されており、ここで以下のEspritプロジェクトの業界内調整を行っているようである。またこのWONDER MARは昨年より半年ごとにワークショップを開催している;
1ST WONDER MAR Workshop at Kavala, Greece, 19th-20th May, 1999
2nd WONDER MAR Workshop at Como, Italy, 18th November, 1999
3rd WONDER MAR Workshop at Copenhagen, Denmark, 26th May, 2000(予定)