日本財団 図書館


すなわち、造船業は典型的なそして一船毎のアセンブリ産業であり、造船業側から見るとその全体コストの60%は外部よりの資機材調達費用である(図2-4)。そのうち鋼材やパイプ等の資材については自社で加工するが、ポンプや電動機、デッキクレーンといった舶用機器(200品目以上ある)はそれぞれのメーカから完成品の形で調達して船に組み込む。それゆえ、その調達に要する引合作業等の自社コストも別途計上される経用役費や設計費の中に含まれており、特に設計費の約半分を占める艤装設計のかなりの部分が調達の注文仕様書作成や購入機器の寸法重量・機能の確認等の機器メーカとのやりとりに費やされている。それゆえ、この分野のコスト削減は、費用対効果の観点よりかねてからその重要性が指摘されていたところである。

一方機器メーカ側も、各造船所からの数多い似たような質問にいちいち対応するための手間、製品を売り込むために用があってもなかっても日参することが評価される(飽きずに来るから商いだ)といった日本的商慣習の弊害、そして何よりも造船各社毎で異なる買付・納入形態に対応するために発生する本来不必要なコスト、等を解消するといったメリットがある。すなわち、本プロジェクトのそのようなメリットを両者で共に享受するというWin-Win関係の実現を旨とする造・舶両業界共同のプロジェクトとして本プロジェクトは発足した。

 

015-1.gif

図2-4 造船のコスト構成(Ref.3、4)

 

2.3 スケジュールと実施体制

 

本プロジェクトは表2-1に示すように、3ヶ年計画であり、その実施に当たっては図2-5に示す体制を取っている。作業の中核となる企画WGは、造船、舶用の両方からそれぞれ10社を選び、その各社の実務者クラスで構成した。さらに本年度はシステム開発が本格化するとともに、後述のように実証実験も実施したため新たにシステムサブWGを新設し、その任に当たらせた。情報表現形式開発については、その対象となる舶用機器は3ヶ年で計50品目を考えており、まず初年度には互いに性格が異なる発電機エンジン、ポンプ、電動機、デッキクレーン、錨鎖の5品目を選び品目毎に検討チームを設け、その標準的業務プロセスの作成と技術情報交換規約の策定作業を掘り下げて行った。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION