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7.3 業務変革と情報技術との関係

前述の業務変革項目と、高度造船CIMの基盤情報技術との関係を、表7.3-1に示す。この表において◎で示すものは、業務変革の実現に対してその情報技術が大きく寄与すること、関連することを示し、○は◎程ではないまでも実現にある程度寄与することを示す。

この表を縦方向に見ると、プロダクトモデリング技術が、各業務分野におけるほぼ全ての変革に寄与するうえ、◎が多いことから、寄与の度合いも高いことが分かる。同様に、分散オブジェクト技術も多くの変革に寄与していることも分かるが、分散オブジェクト技術の場合、システム環境等のインフラ技術であるので、明示的にはエンドユーザーとかかわりを持たないという特徴がある。

一方、プロセスモデリング技術及びエージェント技術は、機能設計における業務変革に寄与していることが分かる。これは、機能設計においては試行錯誤が多く、また、情報及び知識の共有化のため、作業者間でタイムリーに情報が伝達されることが必要なためである。それ以外の分野においても、業務変革のためには情報及び知識の共有化は必要であるが、比較的定型的な情報伝達が多いので、プロセスモデリング技術やエージェント技術よりも、電子メールその他の、既に実用レベルになっている情報技術の有効活用が重要と考えられる。

業務変革項目に対して、分散オブジェクト・プロダクトモデリング・プロセスモデリング・エージェント技術から構成される高度造船CIMの基盤情報技術が、このような変革を大いに支援するということが出来る。

既述のように、これらの業務変革項目に明確な裏付けはなく、個々のキーワードに対しては異論もあろうが、総論としては将来的にこのような方向に変化して行くものと思われる。ここに掲げたキーワードには、高度造船CIMの開発研究が完了した時点ですぐにも実現できるものもあれば、実現のためには本開発研究による成果を基に、更に研究や開発を続けていく必要があるものまで含まれる。

図7.3-1では、本開発研究の対象範囲、システムの業務カバーレッジを、造船業務全般の中で示している。

図で二重線で囲った業務は、平成元年度からの開発研究事業である造船CIMの研究対象範囲を示しており、ハッチングしてある業務が本開発研究の研究対象範囲である。設計業務と工程設計については、従来研究からの延長であり、その実用化という側面から完成度を高めることに注力している。一方、設計工程の管理、いわゆる業務フローの管理についての研究が新規の研究課題として掲げられている。

一方、太枠の中の業務は、市販されているERP・PDM・CAPP等の業務ソフトが容易に適用できる可能性がある業務を示している。これらの市販ソフトウェアの多くはORB標準になっているので、提案しているシステム構成の中で容易に既存システムとの共存が期待できる。

 

 

 

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