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7. 高度造船CIMの造船業務への適用の具体化

高度造船CIMが完成して造船所に導入されると、その工場の運用環境に合った実用システムとして定着して行くことになろうが、一方、工場での造船業に関連する業務においては、経営基盤をより強化にするため、質的変化をもたらす変革が日常的に、かつ早いピッチで実施されているのが実状である。

ここでは、造船所においていろいろの業務が変革して行く段階で、高度造船CIMが変革をどのように支援できるのか、その具体的適用要領はどうなのかなどについて述べることとし、システム的には、ユーザーが期待している要件や、システムの適用方法を、具体的に検討し整理する。  

最初に、特に設計業務について現状の問題点を念頭におきつつ、今後はこのように業務が変化するであろうとか、あるいはこうあるべきではないか、という観点から検討する。次いで、高度造船CIMの基盤となっている、新しい情報技術で可能となることを並べて整理し、業務変革の各項目と対応付け、業務変革のニーズと、情報技術のシーズの関係を明らかにする。そして、業務変革と情報技術とを組み合わせて、現段階で想定できる、具体的な高度造船CIMの適用方法を、運用シナリオという形式で提案し、更に、システム導入の手引きという視点に立って、造船所ユーザーが準備すべき作業の手順を解説する。

 

7.1 設計業務変革のイメージアップ

ここでは、設計業務を中心とした変革を、ありたい姿や、あるべき方向という見地から述べる。その目的は、高度造船CIMが導入される時期には、設計業務がこう変革している、あるいは変革しつつある、という基本的な認識を合わせることと、その中で高度造船CIMの情報技術の位置付けや役割を明確にすることにある。なお、各社が現在持っている政策なり開発課題や実施項目を調査・集約して、あらゆる状況を網羅して精度よく方向性を展望することは、現実的には出来ないので、以下に列挙する業務変革キーワードの根拠とその重要度には、必ずしも明確な裏付けがあるわけではない。

業務変革項目のマップを図7.1-1 に示す。縦方向は大きな業務群を示し、横方向は個船の契約から加工開始までの時系列を示す。入力・出力と矢印は、業務間の情報の大きな流れを示し、また、後述する業務変革についてのキーワードを示した。

図では後述する情報技術と位置付けとして、設計業務の上流のブロック分割業務と機能設計のフェーズでは、プロセスモデルによる協業支援が期待されること、詳細設計フェーズではプロダクトモデルによる情報の整合性保持が期待されることをハッチングで示している。

 

 

 

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