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5.5 技術的評価

さきに述べた個別機能の確認結果とアプリケーションやアダプターを用いた検証の結果によって、高度造船CIMの提供するPM(ACIM PM)が「深さ方向(構築・操作機能)」、「幅方向(表現能力)」のどちらの面においても実用的なものとなっていることが確認できた。これはACIM FLが造船業務の詳細な分析に基づいて整理したオントロジをライブラリ化したものだからである。ACIM PMは船という製品情報と、その製品に関する常識的な知識(ある意味で基本的制約条件)を表現する実用的なモデルとなっており、情報整合性を常に保持したモデルが構築される仕組みを持っているし、オブジェクト指向に基づいているので、柔軟なモデル拡張が可能である。造船所の業務は、製品情報を中心とした活動なので、製品に関連した情報を広く表現したPMは、高度造船CIMの中核的な構成要素である。

PMの主な特徴を整理すると次の通りで、実現度を特記してある項目以外はACIM PMにおいて既に実用レベルの機能が提供されている。実現度を記してある項目も、実用化において大きな障害となるような部分が実現していないというわけではない。実現レベルの評価に記してある内容は、PMをより高度化する際に検討すべき方向を示しており、PMに関しては、高度造船CIMにおいて十分実用的なレベルのものが提供される。

(1) カバー範囲が広く拡張性があること

PMは造船所の製品設計や、製造業務のシステム支援に必要な船殻・艤装・工作・資源・日程管理等の情報を表現できる。ACIM PMで表現できるのは基本的には各造船所に共通な部分だけであるが、造船所ごとに固有な部分、例えばスロット等の詳細形状パターンなどを容易に拡張できるので、各造船所の実状に合わせたカスタマイズが可能で、造船所の情報共有と業務のスムーズな連携を実現できる。

(2) 設計意図が表現できること

(a) システム的な特徴

ACIM PMは、設計変更によって基準となっている形状が変更された場合でも、それを参照している形状は自動的に追従して変更される。こうして、設計に不可避の試行錯誤を効率的に実施することが可能となっているし、上流で決定したデータに遡って情報を修正しても、自動的に整合性が維持される。ACIM PMでは、このような機能を実現するため、区画壁や部材のトリム関係及び相対関係だけでなく、ブロック分割面のトリム関係や相対関係、更に艤装品間の間接関係など、関係情報を十分に表現できるようになっている。こうして、設計変更や前船データの準同型船や類似船への適用時に、変更個所に関連する部材や機器配置を、整合を保って自動的に追従させることが出来る。

また、ロンジとかトランスといった部材の種別の情報や、スロットオープニングに、詳細構造パターンで指定する形状とは独立に、強度的な見地からカラープレートで塞いだり、スリットタイプとすることの必要性の有無などというレベルの、設計者の意図を表現できるようになっている。

 

 

 

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