日本財団 図書館


(e) まとめ

アダプターを利用して、MATESの実船構造データを、主要船殻構造、及びスロット形状や骨端部形状等の詳細形状とも、PMに伝達し格納することが出来た。これにより、船殻FLは実船構造を表現する能力を有することが検証できた。また、伝達した船殻構造情報を利用して、PMの持つ種々のメソッド機能、及びPMベースのアプリケーションが利用可能であること、更に、そのアプリケーションで生成した情報をMATESに取り込み、既存システムで継続的に利用可能であることが確認できた。アダプターの開発から得た知見として、曲面部材に関してPMとMATESの幾何処理の誤差設定値が異なるので、曲面上の接手線を再投影するなどの対策が必要であること、PMとMATESのモデル間マッピングに関して、板、接手などの構造要素の対応関係は付き易いが、関係情報の表現に差があり、複雑な構造部位の関係情報生成に注意が必要であることが分かった。これらへの対応機能を織り込むことで、上記の通り実船ブロックの情報伝達が可能となった。

(2) TRIBONとPMのデータ交換実験

TRIBONの船殻設計用モジュールであるTRIBON-Hull(以後、単にTRIBONと略す)は、詳細設計や生産設計に関して特に豊富な機能を有する、造船用の船殻CADシステムで、中間製品に相当するアセンブリ・ツリーも表現できるモデルを有している。一方、高度造船CIMで構築したFLは、設計初期段階における試行錯誤を伴う作業を効率良く支援できる機能を持つ、非常に柔軟性に富んだモデルになっている。そこで、本実験では、バルクキャリアのデータを用い、主として前述のMATESとPMのデータ交換実験とは逆方向のPMからTRIBONへの変換を行った。これによって、PMで構築された実船モデルがTRIBONに適切に伝達され、TRIBONを使った後工程でそのまま利用できることが確認されれば、PMが実用レベルの表現能力を有していることが検証される。

(a) アダプター実用時の利用形態

前述のように、高度造船CIMのFLは区画情報と部材情報が統合されているうえ、部材の貫通関係やブロック分割位置なども含めて、影響を受ける関連情報を自動的に修正して、整合性を保つように変更できる機能を有しており、試行錯誤を強力に支援するモデルになっている。そこで、ACIM FLとTRIBONとを組み合わせて利用する場合は、初期段階でのシミュレーションやモデル構築をFLベースのシステムで行い、情報がある程度確定した段階で、その情報をTRIBONに伝達するといった使い方が考えられる。

そこで、TRIBONとPMのアダプターは、図5.4-10に示すようにPMからTRIBON、TRIBONからPMへの双方向の変換機能を有するものとしているが、どちらかと言うとPMからTRIBONへの方向の変換に重点をおいたものとした。

1]PMに存在する1隻分の部材データからTRIBONにブロック単位でモデルを伝達する機能

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION