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船殻設計や艤装異分野設計との協調においても、一般に関係情報が活用されていない。例えば、機器と船殻補強のように、元々は明確な関係に基づいて設計されたものでも、その両者の関係は、設計者の頭の中だけに維持され、以後は別々に設計展開されて、両者の関係情報を明示的に持って、互いの設計展開に活用するという仕組みではない。従って、別々に設計展開した後、互いの情報を統合するという方法で不整合が確認できたとしても、それを回避する方法や要領の判断を下せるのは、不整合の現象を見るだけで、元々の関係情報を思い浮かべられる熟練設計者しかいない。そもそも、関係情報が明確でなければ、不整合を不整合と認識すら出来ないこともあり得る。

これらの「根拠となった位置関係」や「元々の明確な関係」は、設計の過程で設計者が盛り込んだ設計意図で、これを関係情報の形で表現しておけば、設計次工程への引き継ぎや設計変更の際などに、その関係情報を再利用することによって、設計品質の向上と設計業務の効率化が期待できる。

(3) 系統や経路の定義

既存システムには、配管設計や配線設計において、系統と配置の整合性を維持するための様々な機能があるが、いずれも柔軟性の点で課題を持っている。

例えば:

・設計者は系統設計を配置設計に反映させ、配置設計完了後、系統と配置の整合性チェックをシステム的に行う

・系統設計のうち、系統仕様はシステム的に配置設計の初期値として反映されるが、トポロジは、設計者が配置設計に反映させる

・系統仕様やトポロジは、共にシステム的に配置設計の初期値として反映されるが、その後の両者のつながりは無い

という仕組みであり、いずれも系統と配置が、それぞれ独立した扱いになっている。例えば、系統設計と配置設計のどちらか一方が変更された場合、設計者が他方も修正して、整合性を維持しなければならない。

配管でたとえるなら、系統設計と配置設計のいずれにあっても、「管の仕様は系統仕様」、「管や弁のつながり方はトポロジ」である。こういう、本来は一つであるはずの情報を分けて持ってしまうため、その整合性を維持するために努力しなければならないのが、現状である。

「系統があって配置がある」という考え方から、「一つのものを、系統ビューで見るか、配置ビューで見るかの違いだけ」という発想に転換して、図3.5-6に示すような姿で系統と配置を一元化することによって、「整合性の常時確保」と「整合性維持の努力廃止」という、現状では相容れない目標を、同時に達成することが期待できる。

 

 

 

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