航行が可能な海氷中の割れ目や狭い通路は水路(Lead)と呼ばれる。流氷と海岸、あるいは流氷と浮氷壁との間の水路を沿岸水路(Shore lead)、流氷と定着氷との間の航行可能な水路をフロー・リード(Flaw lead)という。
直線的な形でない氷に囲まれた様々な海水面をポリニヤ、氷湖(Polynya)という。氷湖は砕け氷があったり、新成氷、ニラス、板状軟氷で覆われていてもよい。沖側が流氷で岸側が海岸や浮氷壁のときを沿岸氷湖(Shore polynya)、岸側が定着氷ときはフローポリニヤ(Flaw polynya)といい、毎年同じ場所に現われるときは再現氷湖(Recurring polynya)という。
8. 氷の表面の特徴(Ice-surface feature)
変形を受けていない海氷を平坦氷(Level ice)、互いに押し合い、所によっては押上げまたは押下げられたりしている氷を総称して変形氷(Derormed ice)という。変形氷は、いかだ氷、氷脈氷、氷丘氷などに分けられる。
氷塊が互いに重なり合っている変形氷がいかだ氷(Rafted ice)であり、いかだ氷の一種で指を交互に上下させて組んだような姿の氷をゆび状いかだ氷(Finger rafted ice)という。
圧力を受けて壊われた氷が山脈状あるいは壁状に盛り上がって連なる部分を氷丘脈(Ridge)という。氷丘脈の下に押し下げられた水中の部分は竜骨氷(Ice keel)という。出来て間もない氷丘脈は斜面の傾斜が40゜位の鋭い峯を持ち、新氷丘脈(New ridge)と呼ばれる。斜面の傾斜が30〜40°位で頂上が少し丸くなって個々の氷塊が見分けられない氷丘脈は風化氷丘脈(Weathered ridge)、斜面の傾斜が20〜30°位で頂上が非常に丸みを帯びた氷丘脈は最風化氷丘脈(Very weathered ridge)、峯の起伏が特徴を残す相当に風化した氷丘脈は老氷丘脈(Aged ridge)などと呼ばれている。凍結氷丘脈(Consolidated ridge)は土台の部分が互いに凍りついている氷丘脈である。通常一年氷の氷片が不規則に積み重なり合って山脈状や壁状になった氷を氷脈氷(Ridged ice)という。同じような特徴をもった氷脈氷が大量にある区域を氷脈氷帯(Ridgedice zone)と名付けている。
圧力によって壊わされ押上げられた氷の山を氷丘(Hummock)、押下げられて水中で氷丘の下に溜まり氷塊の部分をさかさ氷丘(Bummock)という。垂直あるいは傾斜して立っている単独の氷盤で、比較的平らな氷で固まれているものを直立氷盤(Standing floe)と呼ぶ。氷片が互いに不規則に積み重なった起伏のある海氷は氷丘氷(Hummocked ice)と呼ばれ、風化するとなだらかな丘陵状になる。氷河壁、浮氷壁、氷山や氷盤の水面下に氷の張出しができた部分を氷衝角(Ram)という。通常それらの氷が海面で激しく融解したり浸食されたりして生ずる。
積雪のない氷をはだか氷(Bare ice)といい、積雪のある氷を冠雪氷または載雪氷(Snow-covered ice)という。風で吹き飛ばされた雪が障害物の風下に溜まったり、風の渦で堆積したりした雪を吹きだまり(Snow drift)という。両端が風下方向に向いた三日月形の吹きだまりは雪バルハンとして知られる。風食や堆積により雪面に生じた鋭い不規則な起伏をサスツルギ(Sastrugi)という。サスツルギはそれが作られた期間の主風向に平行な峯をつくる。