本条約にはIからVIまでの6種類の附属書があり、それぞれ、順に、油、ばら積みの有害液体物質、容器等に収納された有害物質、船舶からの汚水、船舶からの廃物及び硫黄酸化物(SOx)・窒素酸化物(NOx)・オゾン破壊物質の排出規準及び汚染防止に関する規則が示されている。なお、附属書IV及びVIはまだ発効していない。通常運航時における環境汚染防止のための規準に加え、事故時の汚染を軽減することを目的とした規定も設け、1992年の改正ではタンカーの二重船殻についての規定も採り入れている。また、1991年の改正では、油流出時の緊急対策計画(Shipboard Oil Pollution Emergency Plan:SOPEP)の制定を義務付けている。
●OPRC条約
正式名称は、「油による汚染に関わる準備、対応及び協力に関する国際条約」(International Convention on Oil Pollution Preparedness, Response and Cooperation,1990)。船舶、沖合い構造物、海洋施設及び油関連施設に関わる大規模油汚染事故の被害の軽減を目的として、汚染事故に対応するための各国の能力に関する情報の交換、油による汚染に対する緊急時計画の作成、海洋環境または各国の沿岸及び関係利益に影響を及ぼす恐れのある重大な事件に関する報告書交換、並びに油による海洋環境の汚染に対応する方法についての研究開発に関する相互援助及び国際協力の推進について定めた条約。
●国連海洋法条約
正式名称は、「海洋法に関する国際連合条約」(The United Nations Convention on the Law of the Sea of 1982)。本条約は、領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚、公海、深海底等の海洋に関する諸問題について包括的に規律した条約である。本条約は、第3次国連海洋法会議(1973年〜1982年)において審議され、1982年に採択された。しかしながら、先進国の多くが深海底開発に関わる第11部の規定の内容に不満を表明したため発効が遅れた。このため、国連事務総長主催の非公式会議を続けた末、これらの規定を実質的に改訂する協定が1994年に採択され、同年本条約は発効した。本条約では、その第12部において海洋環境の保護及び保全、海洋環境の汚染の防止、軽減及び規制のための措置等について規定している。
●SOLAS条約
正式名称は、「海上における人命の安全のための国際条約」(The International Convention for the Safety of Life at Sea)。海上における人命の安全を確保するために必要な船舶の構造、設備等に関する要件を定めた条約。1914年の第1次条約以降、造船技術及び航海術の発達、重大事故の発生等を契機として新たな条約・議定書・改正が採択されてきたが、1974年の議定書は海洋汚染防止の見地からタンカーの安全性の向上と船舶検査の強化を主な内容とするものとなっている。
(2) 北極海の環境保護に関わる国際法及び国際協力
上に述べたように、船舶に起因する環境汚染の防止・軽減を目的とした国際法は着実に整備されつつある。