以上、各種標識、衛星による船位決定システムについてその概要を記したが、以上の情報は、INSROPにおける研究レポート(WP-108)に基づくものである。本レポートの内容は、1998年現在における情報をまとめたものと考えられるが、近年の経済的混乱の中でこれらの運航支援設備等の状況に変化があることが考えられる。例えば、標識等に対してどの程度の補修・交換等が行われているかについての正確な情報は無く、従って、特にNSR東側海域においては、これらの標識等が機能しなくなっている状態も考えられる。また、DGPS用の陸上ステーションの計画についても1998年では実験段階であるとされ、その後の実用化についても新たな情報は無い。
(2) 港湾
NSRはスエズ運河等を経由する航路に対し、大西洋と太平洋とを結ぶ航路としての位置付けをすることができるが、その一方、ヨーロッパ、極東あるいは北米の各都市とロシア北方の都市を結ぶための航路、あるいはロシア北方の都市間を結ぶ航路でもある。この意味において、NSR上における港湾の果たす役割は大きい。また、大西洋と太平洋を結ぶ航海においても、各種の補給、緊急の補修・避難等のためにこれらの港湾を利用する場合もあろう。NSR上及びその前後における主要な港湾及び地点間の距離を表4.2-1に示す。