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SA-15型商船は楔形砕氷船首を有し、厚さ1mまでの平坦氷中における連続砕氷航行が可能である。NSRにおける運航は、夏期には単独航行を、冬期においてはArktika級の砕氷船によるエスコートの下の運航を想定している。

SA-15型商船には、氷海船舶としての様々な特徴を見ることができる。推進システムは、減速ギアを介してのディーゼル直結型であるが、可変ピッチプロペラが装備されている。前述のように、可変ピッチプロペラは、ラミング時の前後進の切り替え等に迅速に対応ができ、氷海船舶の推進器として有利である。一方、主機と減速ギアの間には、機械式(摩擦)継ぎ手と流体継ぎ手の二種類の継ぎ手が装備され、氷の有無に応じて両者が使い分けられるようになっている。すなわち、氷海域においては流体継ぎ手を用いて、プロペラと氷の干渉があった場合のアイストルク発生から主機を保護し、一方、開水域においては機械式継ぎ手を利用して燃費の向上を図る(図4.1-5(a))。また、船体と氷との間の摩擦の軽減並びに冬期における碇泊時の船側への氷の凍着防止のためにエアバブリングシステムが装備されている。この他、前方の氷況監視のために船首部に監視台が設けられている。監視台と居住区画の間は船内通路でつながれ、暴露部へ出ることなく行き来ができるような構造となっている。

 

(2) 砕氷船

SA-15型商船をはじめとする氷海商船の建造の一方、ロシアではこれらの船舶のNSRにおける氷中航行支援を目的として、旧ソビエト連邦時代に、強大な砕氷船団が形成された。砕氷船による航行支援は、ウラジオストックの極東海運会社(FESCO)とムルマンスク海運会社(MSC)とにより、NSRを東西に分けてそれぞれ分担される。このため、砕氷船の多くはこの両社により運航されている(表4.1-4)。ただし、これらの砕氷船の所有者はロシア政府であり、両海運会社に運航依託される形式となっている(WP-96)。なお、現状ではFESCO保有の砕氷船の稼働率は低く、実質的な意味ではロシアの砕氷船はほぼ全てMSCの運用によっている。

ロシア砕氷船団の中核を成すものが5隻のArktika型の原子力砕氷船(Arktika、Sibir、Rossya、Sovetskiy Soyuz及びYamal)である。これらの原子力砕氷船は全てソビエト連邦により建造されている。

 

表4.1-4 ロシアの砕氷船団

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