耐氷船とは、文字通りに解釈すれば、周囲の氷からの力に耐え得る能力を有する船舶であり、この意味においては、全ての氷海船舶が耐水船に分類できよう。しかしながら、ここでいう耐水船は、砕氷船に対応するものとして位置付けられる船舶である。砕氷船とは、氷海域における他船の支援・救援、各種の調査・研究等の目的のために、積極的に氷中航行を行うことのできる構造・機能を有する船舶である。これに対し耐水船は、主に貨物輸送等の商業目的の船舶であり、砕氷航行は比較的穏やかな氷況の中で必要最小限に抑えることを想定した船舶である。ただし、規則上は耐氷船、砕氷船に対してこのような機能上の分類は明確には与えられておらず、どちらの規則を適用するかは船主等の判断による。事実、耐水規則により建造されながらもある程度の砕氷能力を有する船舶もある。例えば、後述するロシアの代表的な氷海商船であるSA-15型商船は、ロシアの耐氷規則により建造された船舶であるが、厚さ1mの氷板を連続砕氷する能力を持つ。このように、耐氷規則による船舶であってもある程度の砕氷能力を有する船舶をicebreakerに対して、icebreaking shipと呼ぶ場合もある。
耐氷船舶に関する規則については、各船級間においてある程度の類似性が認められる。例えば、NKの耐氷規則は、基本的にはFSICRの規則に準拠して制定されている。FSICRでは、耐氷規準の厳しい順にIA superからIDまでの耐氷船のクラス分けをしているが、他の規則における耐氷クラスについても、一般的にこれらとの相当性を与えることができる。一方、砕氷船については、必ずしも全ての船級協会の規則において耐氷規則とともに砕氷規則が与えられている訳ではなく、NK規則及びFSICRには砕氷規則は含まれない。