3.1.10 亜寒帯針葉樹林
冬の気温が-40℃以下になり、冬の日照時間がほとんどない北緯60゜以北の大地に、大森林地帯タイガが存在する。タイガは、原生林(針葉樹林)を意味するシベリア先住民の呼び名であったが、今では広く北半球の亜寒帯に分布する針葉樹林全体に用いられる。落葉針葉樹のカラマツが主体の“明るいタイガ”と、常緑針葉樹が主体の“暗いタイガ”とがある。シベリアのタイガの面積は、アマゾンの熱帯雨林の面積より大きい。
永久凍土の表層は、夏に融け、冬に凍るので活動層と呼ばれる。活動層の下は、堅く凍結した永久凍土であり、水を通さないので、夏の融け水は活動層に溜まる。
タイガのカラマツの根は、地表約20cmの活動層に根を張って大木を支える。融解が活動層の下の永久凍上にまで進むと、カラマツの根が緩んで倒れてしまう。そこは更に日射を吸収して陥没し、池を作りながら亜寒帯樹林が崩壊していく。永久凍土が融解して体積減少による沈下でできる皿状の窪みをアラスという。その低地に水が集まり、冬には凍るが、次の夏には更に融けて沈下が進む。
長年のうちには深さ3〜20m、広さ0.5〜100km2に及ぶものができる。氷が豊富なところでは、水が溜まり、沼や湖が点在することになる。冬に凍って夏に融け、地下に浸透しない水が大きな池や湖を作る姿が、北極海へと続くアラスカ北部のノーススロープなどに見ることができる。
亜寒帯樹林帯の北では、活動層が浅くなって、樹高の低い樹しか育たないツンドラに移行する。