これらの研究の結果、北極海航路は夏季はもちろんのこと、冬季でも砕氷船の支援があれば技術的に通行可能であることが明らかになりました。また、商業航路として実用化するために今後取組むべき課題が示され、ロシア側も昨年ノルウェーで開催された「北極海航路に関する国際ユーザー会議」において積極的に対応することを表明しました。
この北極海航路が実用化されれば、東アジアとヨーロッパ間ではスエズ運河を経由する航路に比べて距離が約半分と短くなるためその経済的効果は大きく、また南北2つの航路を持つことになり、安全保障の面からも大変意義深いものと考えられます。更に、北極海海域は天然資源が豊富に存在する所でもあり、それらが市場にもたらされることにより世界の経済にも貢献するものと思われます。
本書は、この国際北極海航路計画で得られた貴重な成果を中心に、北極海における実船航海試験の結果などをとりまとめたものであり、北極海航路について勉強しようとする学生はもちろんのこと、海運や貿易などの関係者あるいは政策決定者にとっても参考になるものと確信いたします。
終わりに、国際北極海航路計画に携われた各国の関係者の方々に対して、また国内においてご指導ご協力を頂きました北極海航路開発調査研究委員会の藤田譲委員長(東京大学名誉教授)をはじめとする委員各位、特に本書の執筆を担当されました北川弘光博士(北海道大学教授)ほか執筆者各位に対して厚くお礼申し上げます。
平成12年3月1日
国際北極海航路計画運営委員会
委員長 笹川陽平