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油処理剤の散布に当たっては、その影響を最も受けるであろう漁業関係者の同意が必要であるが、少なくとも水深10m以浅の海域では、上記のように油処理剤で処理した油が海底付近まで分布するおそれがあるので使用を避けた方が望ましい。

また、油処理剤の散布により油塊が微粒子化されて海面から海水中に分散されることから、冷却水、淡水化処理施設等各種産業用海水取水口付近での油処理剤の使用は避けるべきである。

 

(2) 流出油に対する油処理剤の使用限界

油処理剤の油塊分散能力は、油の流動点と周辺海水温度における粘性に大きく依存する。風化及びエマルジョン化作用により短時間のうちに粘性は増大し、流動点が上昇し、結果的に分散しにくくなる。

油の粘度が非常に高いと、油処理剤の溶剤が油中に浸透する前に、油処理剤が油から逃げてしまうので有効ではない。一般的にいって、油処理剤は、約2,000cSt未満の液状油及び油中水型エマルジョンの大部分のものを分散させる(図−5参照)が、油の粘度が2,000cStを超えると効果が薄れ、5,000cSt以上になればまったく効かなくなる。流動点が流出海域の水温とほぼ同じか、それを上回るような高粘度のエマルジョン(ムース)又は油には、油処理剤の使用は不適である。

その反面、軽油等の軽質油は、非常に速く自然に分散するので、火災の危険を防止するために使用するのでなければ、原則として油処理剤は使用されない。

 

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図−5 油の動粘度と油処理剤による乳化率の関係

 

 

 

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