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(1) 拡散

海面に流出した油は、一般に力学的平衡により広範囲に拡がっていく。流出油の拡散過程において油の物性は風、波、流れ、温度、太陽光線などの外的条件の影響を受け変化していくが、これらの諸条件を加味しながら油の拡散を予測することは困難であり、一般的には理想的条件において考えられている。

油が、海上の一点において瞬時に放出された場合、油は水との比重差から水面上に浮かび、重力の位置エネルギーをもつこととなる。流出初期(第1段階)では、この重力のエネルギーは運動エネルギーとなって、油は急速に水面上を拡がっていく。

ある時間が経過すると運動エネルギーは次第に弱まる一方、油に接した海水の境界層が拡がり、油の位置エネルギーにより水平に広がろうとする力は、この水の粘性抵抗に抗しながら広がっていくようになる。

これが第2段階の拡散で、さらに時間が経過すると位置エネルギーが小さくなり、主として海水の表面張力が水平方向に広がる力として大きくきくようになり、これに抗するものは水の粘性係数で、これが拡散の第3段階にあたる。さらに時間が経過すると油のもつエネルギーと海水の表面張力が平衡し、油の拡散は停止する。

油の拡散については、従来から専門家による解析が試みられており、代表的な流出油拡散式を比較すると表IV-1のとおりである。

 

表IV-1 流出油拡散式の比較・検討

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