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1. シンポジウムの主旨

 

サンゴ・サンゴ礁の健康は、グローバルな気候変動や海洋環境の変動によって影響を受けている。従って、サンゴ・サンゴ礁の健康状態は、グローバルかつ長期的な環境変動の重要な生物指標として利用できる。炭酸ガスの増加による地球温暖化の傾向は、サンゴ礁の健康度を変化させ続けてきた。さらに、サンゴ礁海域は生物生産そして生物的多様性を保持するうえで重要である。サンゴ礁を環境変動の生物指標とするためには、その健康状態をモニタリングすることが基本である。沿岸生態系はサンゴ礁のみばかりか、マングローブ、海草(海藻)、その他の多くの生物によって構成され、それらは継続的な研究を必要とする。

海洋科学技術センターでは、我が国最大のサンゴ礁海域である石西礁湖(石垣島と西表島の間、25×20km)を対象に、そこに分布するサンゴやプランクトンなどの主要生物のバイオマス(生物量)と健康状態を定量的に把握し、それに影響を与える物理・化学的環境要因との関わりを解明するための研究を進めている。また過去のサンゴの健康状態と環境履歴の解明から、将来の環境変動がサンゴ礁生態系そして人類を含む地球生態系にどのような影響を与えるのかを予知することを目標としている。

研究対象海域は石西礁湖だけでなく、フロリダでの日米共同の海中研究室を利用した研究、そしてオーストリアのグレートバリアリーフやインドネシアのマルク諸島等、世界の代表的なサンゴ礁海域へと展開されつつある。

我々は、このシンポジウムによって世界の最先端のサンゴ礁研究の動向を明らかにし、世界共通の研究目標の作成に資すること、また世界規模の共同研究へと展開していくことを目的としている。

 

2. シンポジウムの概要

 

平成12年2月23日、24日に永田町の日本海運倶楽部で国際サンゴ礁シンポジウム「環境変動の指標としてのサンゴ礁生態系の多様性と健康」が開催された。2日間の延ベ参加者は175名であり、うち海外6カ国から22名の参加となった。国内では大学・研究所等関係者87名をはじめ、マスコミ関係者についても9名参加した。

シンポジウムは海洋科学技術センター平野理事長、科学技術庁地球開発局 池田局長の開会挨拶に始まり2日間にわたって33件の講演発表があった。また各セッションを通じて聴衆数に変化は少なく質疑応答も活発に交わされた。

2月25日には国外講演者を中心に海洋科学技術センターに招聘し、しんかい、潜水シミュレータ等を見学し、日本における海洋研究の紹介と日本の海洋研究者との交流を図った。

 

 

 

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