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ILA(国際ロラン協会)会議

出席報告

 

ILA(国際ロラン協会)会議は1999(平成11年)11月1日から3までの間、英国のロンドンで開催され、当協会嘱託 新井 勉が出席したのでその概要を報告します。

 

1. まえがき

 

現在世界的に普及が進み、カーナビゲーションで利用されているGPSとともに我が国で主に使用されている電波航法援助装置はロラン―CとDECCAである。

さらに平成11年(1999年)3月から海上保安庁はGPSを利用する船舶の日本近海の安全と運行効率の向上を図るため全国に27局のDGPS局の運用開始をした。これらの局は安定した高精度のサービスを提供し利用者の好評を得ている。

一方、地上系のシステムである北海道DECCAは平成13年(2001年)3月末で閉局される予定である。したがって、それ以降はロラン─Cが日本近海を覆域とする唯一の地上系システムとなる。

国際的に見ると、英国でも2000年3月末に50年来運用されていたDECCA局が全て閉局され地上系としてはNorthwest European Loran―CSystem(NELS)が行っているロラン―Cのサービスに依存することになる。ちなみに、DECCAが最後まで運用される国はスエーデンで2002年まで利用される。

したがって、米国の責任で運用されている衛星系であるGPSと国家の主権で制御できる地上系のロラン─Cが当面の主要な電波航法として並存補完する形で存続する。一方で欧州では2008年の運用開始を目指して独自の衛星航法システムであるGALILEOシステムを開発中である。この意味で今回の会議はロランの枠を越えて英国の航法学会であるRoyal Institute of Navigation(RIN)と協力して開催された。

GPSはその性質から電波が伝搬路の影響を受けやすく偶然または故意による妨害を受けること、米国の運用に委ねられているため国益による影響が懸念されること等により全面的にGPSに依存する危険性を指摘する報告が多くなされた。これらのことから、GPSの運用をしている米国でさえも補完システムとしてのロラン―Cを見直す作業が進んでおり、特に航空業界による強力な要望により当面の閉局の予定は見送られている。

昨年より実用化試験を行っているユーロフィックスシステムは技術的には実用化の目処はついたものの基本的にはGPSシステムに依存するものであるので現在のところさらなる発展の具体的な報告はなかった。

これらの情勢を踏まえ日本でも利用者の航行の安全と効率的な運行を継続的に確保するためGPSを補強するDGPS局とともに並存補強および補完機能を備えたロラン―Cの運用を継続する必要がある。そのためには我が国周辺の海域を覆域とする近隣諸国と協力していかなければならないことを痛感した。

この度、日本船舶振興会の平成11年度補助事業としてこの会議に出席する機会を得られたことは大変有意義であった。

 

 

 

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