4.3 各構成機器の仕様
4.3.1 自船位置計測装置
調査ユニットで扱う計測データは、GPSの位置データを基に構成されるため、搭載した船舶の位置を精度よく計測することが重要となる。
現在、より高精度なGPSとして、D-GPS(Differential Global Positioning System)や、RTK-GPS等のシステムがあるが、RTK-GPSの方がより高い測量レベルの精度を持っており、このRTK-GPSの中にも、1周波利用のもの、2周波利用のもの、GLONASS(ロシア版GPS)衛星を利用したもの等の種類がある。
調査ユニットにおいては、測位精度が重要であるため、価格は高いが、精度が高く安定している2周波のGPS受信機を用いたRTK-GPSによって調査ユニットのシステムを構築する。
また、ここで運用時に問題となるのがRTKの地上局の有無である。現在、共用で使用できるRTK-GPSの基地局は、「海上D-GPS推進協議会」が所有している。これによれば主要港湾の各基地局から半径約15kmの範囲でRTK-GPSの測位が可能となっている。大規模港湾のほとんどで使用できているが、本調査ユニットの性格上、全国各地での災害に対応可能なように、また、測位精度の確実性を得るために、後処理が可能な基地局(地上局)を設置して計測を実施するシステムとした。
RTK-GPSの測位精度について、実際に本調査研究で基準点の位置をRTK-GPSを用いて計測した例が添付資料1の図4.1.5〜図4.1.7に示されている。計測結果のグラフから、平面の揺れ幅は約±15mm程度、高さ方向の上下幅で約±50mm程度であることが分かる。
実験時に用いたRTK-GPSの基地局は、海上D-GPS推進協議会の基地局であり、計測場所から基地局までの距離はおよそ8〜9kmであった。
したがって、海上D-GPS推進協議会の基地局を用いた場合の測位精度は、半径約15km以内において、水平方向:±(1cm+2ppm・D)、垂直方向:±(2cm+2ppm・D)であるから(D:基地局と計測場所までの距離(cm))、実際の精度は水平方向で±約26mm、垂直方向で±約36mm程度であり、高さ方向の計測誤差は若干大きいが、ほぼ必要精度での計測が可能なことが確認できた。
4.3.2 動揺補正装置
動揺補正装置の測定値は、水中部の計測データであるマルチビーム音響測深機の計測値の補正用および、気中部の計測に用いるデジタルカメラの位置の算出に用いる。従って、精度の高い動揺補正装置を用いることが望ましい。マルチビーム音響測深機の計測値を補正するためには、リアルタイムで、正確なピッチ、ヒーブ、ロール等の船体運動量を知る必要がある。従って本調査ユニットにおいては、最新型のマルチビーム超音波測深機に採用されている、高精度のGPS+光慣性ジャイロで構成されるドリフト補正機能付き動揺補正装置を用いる。