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図2 フッドカナル浮体橋

 

7. ニューヨークワールドトレードセンタービル

まず我々の揺れない浮体の研究について説明したところ、港湾局の所轄の1つであるラガーディア空港の滑走路延長を浮体構造で検討中とのことで、興味を示していた。

続いて行ったWTCビルについての質疑応答は以下の通り。

1) このビルはツインタワーで、高さ417m(アンテナ頂部までは527m)。外周コラムと内部コラムを建て込み、これを先行組立した床トラスで連結し、その上にコンクリートスラブを設置していった。

2) ビルの設計は基本的に風で決まっており、ダンパーを用いて風による振動を居住者が不安を感じない範囲に抑えた。振動の許容振幅はビルの高さの500分の1の+-34inchで、ビルの固有周期は約9秒。

3) 風速100mile/hの嵐があったが、あまり揺れなかった。それよりもビルのきしむ音の方が居住者に不安感を与えて問題だった。

4) 米国には5つくらい建築関係の設計基準があるが、このビル建設に当たって統一基準を作成した。風荷重はこの分野で第1人者のコロラド州立大学で周辺のビルなども含む模型による風洞実験を実施し、設計風速を140mile/hとした。

5) ニューヨークは古く固い岩盤の上にあり地震は無く、一般建築基準における設計震度は0.05g程度(マグニチュード5程度の地震を想定)。遠くで発生する地震の卓越周期は一般に2秒程度が多いが、このビルでは固有周期9秒に近いものを考慮している。

6) 制振装置の設計はRobertson氏によるもので、粘弾性材料(Visco Elastic Material)の粘性抵抗を利用したVEMダンパー(図3参照)が採用した。構造的には各フロアの床トラスとコラムの連結部にこのダンパーを取り付けたもので、ビル全体で約10,000セット使用している。ダンパーの製作はスリーエム(付箋紙で有名な会社)とミネソタマイニングが担当した。

7) 粘弾性材料の特性は温度、湿度などに敏感なので、定期的にランダムサンプリングで剥がしてテストしている。また異常に備えて取り替え用の在庫品も常備している。

 

 

 

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