「300号記念」
倒れた柿ノ木 福島県 コイケ ケイコ
年老いて枯れた柿ノ木が、倒れそうだと聞かされていた。でもゆすってみたが、ビクともしなかったと言う声もあった。「あんな太い木だもの、倒れたらすごい音がするだろうなあ」と私は思っていた。その木が倒れたのである。「これ、建物に倒れ掛かったら危なかったなあ」とか、「側を通りぬけたとき、グラリときた」とか傍観者達は青ざめていたが、私にとっては「じゃあ、あの音が」と後になって思わされたくらいで、そんなにビックリするような音ではなかった。
私が出てみると、車を押しつぶすようにして斜めにより掛かり、私の通り道をふさがず三画の隙間を空けてくれていた。