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山下岩男(やましたいわお)(昭和23.4.5生・長崎県福江市)

 

長崎県福江市・黄島救難所副所長の氏は、平成10年8月12日深夜、強風に流され同島沖合の岩場で座礁した漁船の救助指示を受けるや、救助員の滋子夫人とともに救助船で荒天下の海上を現場に急行し、負傷していた漁船の乗組員1名を、相協力して救助された。

 

長崎県・五島列島付近で延縄漁を操業していた佐賀県鎮西漁協所属の漁船・海幸丸(19トン・船長1名乗船)の船長は、8月12日の日没後、五島列島・福江島の沖合で投錨した。船長が仮眠中、錨のロープが激しい風浪の影響を受けて切断され、同船は強風で北東に約6km流されて赤島南岸の暗礁で座礁した。

座礁に気付いた船長は自力で離礁を試みたが、船体は磯波で浅瀬に打ち寄せられ岩場からの脱出は不可能であることから、同日午後11時半頃携帯電話で鎮西漁協等に救助を要請した。

 

同日深夜、救難所長から電話で救助指示を受けた氏は、直ちに救助員の夫人(滋子氏)を伴って黄島漁港に走り、小型の自船・大喜丸(0.6トン)で救助に出動、10〜12メートルの風が吹く海上を現場に急行した。しかし遭難海域付近には暗礁が点在しており、激しい風浪にも翻弄されながら約30分難航して、海幸丸の座礁現場に到着した。

氏と夫人は船長を救助するため再三漁船への接舷を試みたが、付近は岩場で磯波が打ち寄せ接近が困難であったため、漁船を離れ泳いでくるよう大声で指示した。船長が海中に飛び込み泳ぎ始めたことから、氏は自船が岩場に接触し破損転覆する危険を冒して巧みに操船、船長に接近させ、夫人と相協力して船内に引き上げ救助に成功した。

 

氏は、助け上げた船長が座礁した際の衝撃で顔面や手足に負傷していたため、夫人に介護させるとともに直ちに反転、激しい風浪を船首から受けながら約6km離れた黄島漁港に戻り、診療所に船長の治療を依頼し、救助を完了した。

((社)日本水難救済会推薦)

 

 

 

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