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「選考を終えて」

選考委員(東京財団会長)日下公人

 

今年から選考委員が替わって、私も新しく参加することになりました。これまで私はいろいろな選考委員、審査委員をお引き受けして来ましたが、世のため人のために良いことをした人を選考するなどという大それたことをするのは初めてです。自分では何一つそんなことはしてない訳ですから、果たして、その資格有りやと思っているうちに、選考委員会の日になってしまいました。

今年度表彰の候補者は、団体推薦、個人推薦併せて448件にのぼりました。それを事務局によって80件余りの推奨案件とそれ以外とに分類された選考資料の送付を受け、目を通した上で委員会に臨みました。

委員会ではこれを約20件に減らさなければなりません。しかし、減らそうと思うと、心が狭くなります。つまり、あら探しの心になるんです。よく“絞り込み”などという言葉を使いますが、これも私は使いたくない。拾い上げです。良いものを拾い出すのであって、悪いものを落とすのではない。とかくこういう時は、お互いにあら探し、けちの付け合い、そして無難なものが残るということになりがちです。そういう会になると厭だなと思いながら出席したのです。

ところが、この委員会はそうはなりませんでした。委員のそれぞれがご自分の意見をきちんと仰有っていた。それも、世間の物差しに流されない意見ばかりです。世間の普通の物差しには流行があって、今は何でも福祉と環境です。別に悪いことではありませんが、それが五・六年もすると、ぱったり言われなくなったりします。そんなその時々の流行に押された選考になると困るなと思っておりましたが、これもそうはならず、皆さんそれぞれに変わったご意見を仰有っておられ、それでいて最後は妥当な線に収まっていた。大変楽しい選考委員会でした。

一・二ご紹介しますと、まず推薦案件には宗教関係のものが多かったのですが、ばっさり落とされました。理由は、これらは神様のためにやっているのであって、人から誉めて貰おうと思ってやっているのではない、誉めてあげてもお門違いであるというものでした。

 

 

 

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