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海洋法の改訂に向かって:懐疑的、楽観的? それとも理想的、皮肉的?

Towards Delegalozong The Law Of The Sea : Scepticism Or Optimism? Idealism Or Cynicism?

 

Dr. Edgar ゴルド(Gold)

 

出典:SEAPOL WORKSHOP ON 'REGIME-BUILDING IN SOUTH-EAST ASIA',

Phuket, Thailand,

May 1-3, 1989

 

翻訳 若林保男(三菱総合研究所客員研究員)

 

海洋法に興味をもっている50歳以上の人なら、自分の生涯でその海洋法の分野が如何に歴史的発展を遂げたかを知る証人と言える。現行の海洋法の歴史的経緯について、第1回海洋法会議(UNCLOS-I)に導いた1958年の時点まで辿ってみると、我々はほぼ40年間に亘り、人類が努力して如何に重要な制度の過渡期にあったかを確認することが出来る。このような変化を理解することによってのみ、現行海洋法が実際にどのような変遷を辿ってきたかについて正しい評価が出来る。実は、恐らく伝統的な管理システムに関して、以前よりもっと周知され、慎重になっているとの背景があって、海洋法はその間公認されていなかった。他に言い換えて説明すると、恐らく新しい海洋法はあまりにも重要であるために法律家に預けることは出来ないと言えるに違いない。

 

大体85ヶ国の独立国が参加した第1次国連海洋法会議において、その時すでに存在し、あの恐れ多い時代錯誤を犯していた国連、即ち下部機関の国際法委員会では、関連する狭い範囲を越えていた多数の複雑な論点を解決することが出来なかった。しかし、1973年に第3次国際海洋法条約が推薦されるまでには、参加国は110ヶ国に、それが終結された時点には135ヶ国に増え、伝統的海洋国際法は、気がついてみれぱ、過去のものになっていた。それでも国際法専門家のほとんどは、’彼らの’海洋法は様々な外部要索から影響されているということに気付いていた。

 

例えぱ、国際安全保障の見地から1945年以降世界は’あからさまな’戦争を差し控えて来た。しかし、文字通り、今日まで’武力衝突’と名づけるような紛争が数百件ある。多くが大変深刻な地城的または地球的な紛争(湾岸、中東、インドシナである)と、ほとんど全部が海洋利用に影響されたものである。世界人口は警戒すべき割合でどんどん増加しつつあり、資産者と無産者の間の貧富の差は比例的に広がりつつある。世界の多くの場では武力による革命、あるいは平和的な革命が起こっており、新生国が次々に誕生している。恐らく最も重要なのは、今日コミュニケーションは即時、旅行は超音速であり、我々は地球を”管理できる”大きさと見なすほど収縮させている。技術的に言えぱ、我々は他の惑星にも行けるし、小さな惑星を小惑星のかけらに変えることも出来る。しかし、我々はほとんどあらゆることを征服してきた事実にも拘らず、世界中の貧乏、疾病、そして飢餓を撲滅させることができないのである。

 

 

 

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