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工業生産高は3年間にわたり減少を続けていたが、94年には8%以上の増加となっている。

スペインの主要製造業は、自動車、造船、化学、鉄鋼、繊維、衣料などであり、これらはEC諸国と比較しても可成りの規模と競争力をもっているが、造船、鉄鋼、繊維などの部門では、80年代に入ってから合理化が進められている。

また、86年以降、経済の好調を反映して、事務機器、コンピュータ、電子・電機機器、金属製品などの伸びが目立っている。

自動車部門は、輸出総額の約20%を占め、スペインの重要な輸出産業となっているが、その生産を行っている主要自動車メーカーは全て外資系企業である。

スペインの自動車生産高は、世界主要生産国の一つに挙げられている。1995年には196万台の生産記録を達成しているが、96年には194万台に低減している。

なお、これらの自動車のうち約80%が輸出に向けられている。

政府は、経済復興を国家指導の下に行うことを目的とした、国家持株会社の国立産業公社INS (Instituto Nacional Industria)を1941年に設立している。

傘下には、基幹産業の保護・育成、重要産業の大規模投資に対する資金供与、原燃料の確保など、基幹産業からサービス・情報産業部門に至るまで多業種にわたる企業がおさめられている。

INSは、電子工業、航空機、化学肥料、化学、肥料など成長の見込める分野に重点をおき、造船、鉄鋼、石炭などの部門の再編成・合理化、新技術の導入や国際化を目的とする外国企業との合弁企業設立などを推進してきている。

また、政府は国際競争力強化のため、造船、鉄鋼、自動車、家電、化学肥料の5部門を中心に雇用の削減、買収・合併、専門化、補助金支給などを行っており、中小企業の国際競争力強化のためには、情報の提供、国際間の協力関係の促進、生産の合理化などに助成を行っている。

しかし、こうした産業政策のもとに、政府はスペイン産業の強化を図っているが、EC市場統合による国際競争の激化が予想されるため、97年2月に緊急経済措置に続く規制緩和措置の第2弾として「経済活動自由化推進」を決定し、4月には97〜2000年を展望した「経済収斂計画」を発表した。政府は2000年までに、炭坑分野以外の全ての国営企業を民営化する方針である。

スペインのエネルギーは、主として石油(大部分は輸入品)により供給されている。

石油および石油製品の輸入は、輸入総額の11%(97年)に達している。

原子力発電は、97年のスペインの全発電量の29.3%を供給している。

サービス部門は、96年のGDPの63.1%を寄与し、労働人口の60.7%がこの部門に従事している。

 

 

 

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