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2. 工程

たとえ設計が世界最高であっても、その製品を生産する工程の効率が低ければ、競合することはできない。運輸通信省海事振興委員会事務局(OMPC)はJODCの協力を得て造船業構造改善計画に着手し、これにより造船業のあらゆる側面が調査、検討の対象となり、適切な修正が加えられることになった。2000年に入って、まず造船工程のコスト効率向上に重点が置かれる。

3. 設備

日本の国際協力事業団(JICA)の専門家がベンチマーキング分析を行った結果、造船所設備の改善が必要であるとされた。OMPCはこの分析結果を受け入れて、敷地が狭く、設備も老朽化したチャオプラヤ川沿いの小規模造船所の刷新計画に直ちに取り組んだ。実施される設備改善の内容は以下の通り。

・東部沿海地区に造船工業団地を建設し、小規模造船所の移転と刷新を図る。この移転は今後2年間に実施され、改善された設備によりコスト削減、資材フローの効率化と共に、時間を浪費し、付加価値を生まない作業の排除が可能になる。

4. 結び

21世紀を目前に控え、日韓中3造船国の世界市場におけるシェアは、合わせて80%を超えることになる。もとより国際市場ではカルテルのような行為は認められないが、21世紀の世界造船業に望まれることは、公正な競争に基づいた、妥当な船価実現を目標とした国際協調である。この意味において、まだ揺藍期にあるタイ造船業は、近隣諸国に対する比較優位を活用して、造船戦略に必要な修正を加えるのにふさわしい立場にある。その目標は、国内、海外を問わず、コスト効率と環境の安全を十分に意識した、競争力の高い漁船/プレジャー・ボート建造に特化することにある。

OMPCは造船業の構造改善に当たって、三つの主要な戦略的要素、すなわち製品、工程、設備を重視した。この計画には以下のような成果が期待されている。

─作業環境の効率化による単位労働時間の削減。

─価格と品質における競争力。

─経済の激しい変動があっても造船所工事量の安定化を図る。

タイ代表団を代表して、本報告書がご出席の各位に多少なりとも有益な情報を伝え、アジア太平洋地域各国の造船業の共存共栄につながるような環境の醸成に資することを願ってやまない。

 

 

 

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