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マスター・プラン作成に着手した当時、現状の検討から世界的な造船能力の過剰、特に中大型船の新造能力過剰の状況を認識し、タイ造船業は、業界の発展と事業基盤確保のために不可欠な、特定の3領域に力を注ぐことが必要であると認められた。その3大戦略要素とは以下の通り。

1. 製品─市場のニーズに対応したコスト効率の高い製品。

2. 工程─競争力の高い製品を生産するために必要とされる効率的な工程の開発。

3. 設備─工程を支援するために必要な機器の製造。

各個別の戦略要素は他の2要素と相侯って、需要の高い、競争力のある製品を生産するために、タイの各造船所が対応を図り、必要とあれば修正すべき領域を認識するのに役立つ。

1. 製品

慎重な調査と立案作業の後、国内・国際交易に役立つような漁船/プレジャー・ボートに先ず力を入れることが決定された。

この決定に導いた主要な要素は以下の通り。

・現在タイ国内には45,000隻を超える漁船があるが、うち80%超は木造船である。その5%以上を鋼船に転換することになれば、少なくとも10年間、国内需要が続くことになる。

・タイの造船会社の95%は同族企業である。船体長30ないし40mの耐航性の高い木造漁船の建造に関しては豊かな経験と高い技術を具え、木船建造に関する限り、現図場から竣工に至るまで、工程全般を知り尽くしている。2000年は小型船建造/修繕事業者にとって、その伝統的事業形態を新時代にふさわしい形態に転換する節目となる。実際の違いは、材料の違いに過ぎない。すなわち木材でなく鋼材で船を造ることである。溶接工が必要になるとはいえ、従来の木造漁船建造のノーハウを鋼船に適用することは可能であり、したがってわが国としては鋼船建造への円滑な転換が可能と確信している。

・「米国海運システムの評価」と題された報告書によると、向こう20年間で、プレジャー・ボートのユーザー数だけでも65%超の増加を示し、1億3,000万人に達するという。市場自体はスポーツ・フィッシング艇、公海航行用高速艇、デラックス・クルーザーと明確なセグメントに区分されている。各造船所がどんな船艇でも手掛けられるような市場の状況は既に過去のものである。タイは多数の熟練工、比較的低い労賃、日米という2大市場に近いという地の利など、多数の有利な条件に恵まれている。タイの小型艇建造所が、より大規模な造船所と競合するために必要な唯一の条件は、ニッチ市場に食い込むことである。

 

 

 

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