1996年9月に日本が打ち上げたADEOSには、米国が開発したNSCAT(NASA散乱計)が搭載された。NSCATもファンビーム方式で3方向から観測を行うが、衛星軌道の両側で合わせて1200kmの観測幅を持ち、2日で全球の90%の海域が観測可能である。図5.4にNSCATのビーム照射パターンと観測幅を示す。
2001年に打ち上げが予定されているADEOS-IIには、米国の開発するコニカル走査アンテナのSeaWinDSが搭載される予定である。この方式では入射角の異なる2つのペンシルビームで海面の同一領域を最大4方向から観測する。この方式の利点は、狭いアンテナ・ビーム内に電力を集中し、高いSN比で観測でき、弱い風速での観測信頼性が高いことと、棒状散乱計と異なり衛星直下付近の観測が可能なことである。
マイクロ波高度計では直下方向にビームを照射するが、この場合には準鏡面散乱が主要な散乱メカニズムである。図5.2に示されるように、準鏡面散乱ではσ0は風速が増加すると共に減少する。しかし、この割合は小さく、マイクロ波高度計の風速測定精度は散乱計より低い。
海上風のアルゴリズムの例
SSM/Iの海上風速(1987〜1993)は、22GHzと37GHzの鉛直偏波と37GHzの水平偏波を用いて、海上風速、水蒸気量、および雲の雨水量を定めるためにWenz(1989)が発展させた地球物理回帰アルゴリズムにより求められる。このモデルは大気中の吸収と散乱、および風が乱した海面の放射率を説明し、雨粒によるミー散乱または凍った水による散乱は説明しない。1.5mm/hr以上の降水に対しては、モデルは放射の散乱のために有効でない。
ERS-1の海上風速(1992〜1995)の算定方法:中程度の入射角ではσ0は、風速および入射角方向と風向との相対的な方位角の両方により変わる。測定されたσ0から風速ベクトルを計算するには、レーダーの幾何学的位置に対するσ0を風速に関係づける「モデル関数」と、計測されたσ0に一致する風速解のセットを用意する「wind retrievalアルゴリズム」と、wind retrievalアルゴリズムにより決定された4個までの解の中から唯一の風速を選択する「ambiguity removalアルゴリズム」が要求される(Naderi et al. 1991、Halpern et al. 1995)。