3.4 まとめ
TOPEX/Poseidon高度計により測定された波高データを用いて、台風域内の波高分布を解析した。解析期間は1993〜1995年の3年間であり、対象とした台風の個数は55個である。統計に用いたデータ総数は約4700個、各領域の平均波高を算定するために用いたサンプル数は5〜300個であり、それぞれの領域で異なることに注意しなければならない。しかし、台風中心においてサンプル数が少ないが、中心から離れるに従いサンプル数は増加するので、中心を除く統計値の信頼性は高いものと考えられる。
解析結果によると、台風の勢力に依らず、進行方向から時計回り45度〜90度の海域で最も波高が高い。但し、この特性は台風の勢力が強いほど顕著であり、勢力の強い台風では、台風中心から約100〜200km離れた海域で最高波高が出現する。
移動速度の異なる台風については、移動が遅い台風の場合は、進行方向前方で波高が高く、後方半円で波高が低い。それに対して、移動が速い台風では、進行方向右半円が左半円より顕著に波高が高い。この場合、最大波高は進行方向90度方向、100〜200km付近に現れる。また、移動速度が遅い台風と比較して移動速度が速い台風の波高が全体的に大きいことが示された。
これらの波高分布特性は、第2章で得られた海上風分布の特性に矛盾しない合理的性を示す。つまり、風が最も強い海域において波高も最も高い。また、台風が移動する時は、右象限では移流効果が加わり風速を増し、波高がより発達する。また、移動速度が速い台風では、波浪が発達伝播する間に台風が移動するので、最大波浪領域は、速度が遅い台風の波高分布に較べて、進行方向後方に遅れて出現するものと推定される。
台風の右象限(危険半円)で波高が高いことは、船舶による目視観測データや波浪モデルの推算結果から示されてきた。しかし、衛星観測データを用いて台風域内の詳細な波高分布が示されたのは、本調査が初めてであろう。今後はERS1/2衛星やJER-1等の波高・方向スペクトルデータも含めて、より定量的な解析が求められる。
今まで波浪推算からしか推定されなかった台風域内の波高分布が、衛星観測データから明らかになった。これは波浪モデルの精度向上や船舶の安全航行等にとって大きな収穫である。今後は、これらを用いて数値モデルの精度向上を目指すことが課題となる。