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(3) 風分布の重ね合わせ

台風中心を原点とした極座標上に配置された各観測時刻の風向風速データの中から、原点からの距離が500km以内のものだけを抽出し、半経方向に10分割(50km間隔)、動経方向に16分割(22.5°間隔)された合計160の領域毎にスカラー平均した風向、風速を算出した。重ね合わせをする条件は以下のように定めた。

1] 全データ

2] 台風の中心気圧別に3種類(〜959hPa、960〜989hPa、990hPa〜)

3] 台風の進行速度別に3種類(〜10km/h、11〜24km/h、25km/h〜)

 

2.3 解析結果

 

台風経路と海上風の観測例を図2.1に示す。これは、1996年の台風24号による強風の観測例である。衛星が観測した時刻は1時30分頃で、経路図中に示された台風諸元は3時のものである。台風の中心に向かって、風が反時計回りの渦巻きの形で吹き込んでいる様子が分かる。

次に台風域内の風の分布を示す。図2.2は、2.2(3)で示した全データを対象にしたものである。台風の中心を原点、進行方向を0度として、方位を16に分けている。

進行方向から見て右側は左側よりも、前方は後方よりも風速が大きい。また、風の吹き込み角は、右側よりも左側の方が大きい。ここで吹き込み角は、等圧線を円としたときの接線方向と風向とがなす角度とする。

この結果を、1935年の三陸沖台風時に旧海軍水路部が観測した結果(宇野木(1993))と比較する。水路部の観測結果を図2.3に示す。台風の中心からみて、進行方向の右側の方が左側よりも風速が大きいという点は、衛星の観測結果と一致している。

 

(1) 中心気圧による違い

図2.4〜2.6は、色々な中心気圧の範囲毎に同様の解析を行った結果である。気圧の範囲は、それぞれ、850〜959hPa、960〜989hPa、990〜1040hPaである。いずれの図も、図2.2と同様の風向・風速分布の特徴がみられる。即ち、進行方向から見て右側は左側よりも、前方は後方よりも風速が大きく、風の吹き込み角が、右側よりも左側の方が大きいということは、中心気圧に依存しない共通の特徴であるといえる。右側の風速が左側よりも大きいことは、台風域内の風が、気圧分布による風と、台風の進行に伴う風とが複合した結果であると考えることができる。また、台風の進行方向の右側は危険半円、左側は可航半円と呼ばれ、右側の方が風速が大きいことは経験的にも知られていることである。

 

 

 

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